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第58話
「湊もお風呂に入ってきたら?」
濡れた髪をタオルで乾かしながら新が姿を現した。陽斗と同じ灰色のスエットを着ていた。買ったものがたまたま偶然一緒だったって話していた。
「湊は寒がりだから布団二つでよくない?三つもいらないよ」
「狭くないか?」
「その狭さがいいんだろう」
お風呂に行く僕の後ろでそんな会話を交わす二人。あれほど新をライバル視していたのに。こんなにもあっさりと手を結ぶなんて。すごく嫌な予感がする。
お風呂にゆっくりなんて入っていられなくてすぐに上がると、
「ちょっと陽斗、新。僕の着替えは?」
洗濯機の上に置いておいたはずの下着とパジャマがなかった。
「だって必要ないだろ?」
「必要なの。お腹が冷えたら体調が悪くなるのを知ってる癖に、なんでこんな悪戯をするの?」
「俺と新で温めてやるからタオルだけ巻いて来い。言うことをちゃんと聞いたら褒美にこれを返してやってもいい」
陽斗が黒いパンツをヒラヒラと振った。
「前から言おうと思っていたんだけど、もうちょい可愛い下着を買ったら?なんかダサい」
「新もそう思ったか?」
「ちょっと二人とも!」
恥ずかしくてタオルを巻いて二人の前に出る勇気が出なくて躊躇していたら、
「いつまでそこにいるんだ」
「風邪をひくぞ」
二人に手を掴まれてあれよこれよという間に布団に運ばれていた。
「せめて下着だけでも……」
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