29 / 104

第29話 2度目のキスの味

 目を閉じなければ良かったかもしれない。いつキヨくんの唇が僕に触れるか分からないから、ドキドキが酷いのかな。そう思っているうちに、柔らかなものがそっと唇に触れた。舞台の上のあの感触。  直ぐにあの時よりグッと押しつけられて、僕は思わず止めていた息を吐いた。緩んだ下唇をキヨくんに優しく喰まれて、僕はその気持ち良さにため息をついてしまった。  僕の想像では一度触れたら終わりだったはずだけど、キヨくんの唇は離れていかない。僕は戸惑いながらも優しくて気持ちいいキスを止められない。  啄む様に、離れては落ちてくる終わりの無いキスに、僕はすっかり夢中になった。閉じた瞼も重くて開かない。ああ、気持ちいい…。 「…玲、そんな顔してたら止められなくなる。」  目を閉じた僕の顔の側から聞こえて来た、キヨくんの掠れた声に、僕はぼんやりと目を開けた。目の前に僕を食い入る様に見つめるキヨくんがいた。  僕はハッとして慌てて身を起こしたので、キヨくんのおでこに頭をぶつけてしまった。痛そうにおでこに手を当てて呻くキヨくんに、僕は必死に謝りながら、さっき僕を見ていたキヨくんの表情を思い出していた。 「キヨくん、ごめんね!?大丈夫?」  キヨくんはおでこを摩りながら、クスッと笑って、聞いた事のない優しい声で言った。 「大丈夫。…キス気持ち良かった?」  途端に恥ずかしくなった僕が俯くと、僕の頭をポンポンと撫でた。キヨくんは立ち上がると、ちょっと五分だけトイレと小さな声で呟いて部屋を出て行った。明らかにズボンを突っ張らせたのが目に飛び込んで来て、僕はドキドキと居た堪れない。  5分。多分キヨくんは僕にも時間をくれたんだ。僕はベッドから足を下ろすと、ハーフパンツと下着をずり下ろして、言う事を聞かないそれをそっと触った。触れてしまえば止められなかった。  五分も掛からないうちに、僕は手の中にねっとりとしたそれを吐き出していて、ベッドの枕元のティシュで拭った。それを捨てて行く気にはなれなくて、厳重に包むとポケットに押し込んだ。  5分どころか10分ぐらい経った後、キヨくんは部屋に僕の好きなカップアイスを2つ持って戻ってきた。僕は慌ててトイレへ行くと言って、手を洗いに行った。  一体どんな顔して部屋に戻ればいいんだろう。僕は洗面所に映る自分の赤い顔を眺めながら大きくため息をついた。

ともだちにシェアしよう!