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第30話 朝からドキドキ

 「玲~。清君来たわよ~。急ぎなさい~。」  母さんの声に押される様に、僕は玄関へ向かった。一昨日の今日で、どんな顔をすれば良いのか分からない。  結局あれから一緒に、話題の短編映画を観ながら、何事もなかった様に並んでアイスを食べた。帰り際、キヨくん家の玄関で靴を履いていると、後ろからキヨくんが言った。 「明後日、7:50に迎えに行くから。どうせ同じ場所に行くんだし。」  僕はチラッとキヨくんを見上げて分かったと小さく呟くと、自分の家に向かった。家に辿り着いて、鍵を開ける時間ももどかしく、飛びこむように家の中に入ると、僕はその場にしゃがみ込んだ。  心臓が急に恐ろしい勢いで飛び跳ねている。僕、僕とキヨくん一体何をしてしまったんだろう。僕はフラフラと自分の部屋へ辿り着くと、ベッドにダイブした。誰もいない事をいい事に、バタバタと悶えた。  ああ、何を仕出かした?何で僕、キヨくんとキスしたの!ってキヨくんもキヨくんだよ。どうして僕とキスしたいとか言うのさ。何で?キスは初めてだって言ってた。もしかしてキスのリミッターが外れて、誰でもいいからしちゃおうとか?  でも、そもそも僕がキヨくんのベッドに寝てしまったのが原因だよ。眠ったら勃っちゃうことはある。…キヨくんも凄く勃ってた。興奮したって事?何に?僕に?いやいや、それはない。じゃあ、あの空気に?だったらあるかも。  僕は必死で明確な答えを出そうと、転げ回って考え込んだ。僕はハッとして、ベッドに転がっているアニメキャラのぬいぐるみを抱きしめた。 『俺、小沢と付き合ってないよ。あれはわざと付き合ってるって見える様にそうしていただけだから。』キヨくんはそう言っていた。あれが本当なら、キヨくんはモテていたから、ワザと彼女がいるふりをしてモテない様にしたって事だよね。何で?  …女の子が嫌い?それって男が好き?僕にキスしたのって…。僕は自分の唇を指でなぞった。優しかった。僕は気持ちよくてやめて欲しくなくなっていた。キヨくんもやめたくないみたいな事言ってた。  でも、他人の部屋で一人でしちゃうとかアホだ。あり得ない!僕は自分のポケットに押し込んだティッシュの塊を部屋のゴミ箱の奥深くに突っ込んで、あの時窓を開けて換気しなかった事を思い出した。ああ、もう死ぬ。僕の匂いがしたんじゃないかな…。  結局次の日は受験勉強を少しして、コンビニ行って、ちょっとだけ男とキスしたい男の検索して、過激すぎるドキドキする様な画像を慌てて閉じて、ドッと疲れてしまった。ああ、もう訳わかんない。  そんな考え過ぎで疲れ果てた僕が、玄関開けたら当事者のキヨくんが待ち伏せてるとか、もうどんな罰ゲーム!

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