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第35話 遭遇

 僕たちがガヤガヤとバーベキューを楽しんでいると、1と2のテーブルに客が入って来た。少し大人びた彼らはきっと大学生なんだろう。お化粧した綺麗な女の人も数人居るので、気になってチラチラ見ているクラスメイトもいる。  僕は相変わらずキヨくんに接待されながら、バーベキューを楽しんでいた。ふと視線を感じて顔を上げると、大学生グループの中に見知った顔が居た。  僕があっと声を上げる前に、その大学生は僕に声を掛けてきた。 「玲!?いや、びっくりなんだけど!いつ以来?」  僕は皿をテーブルに置いて、いそいそと従兄弟の側へと近づいた。今日被ってきた帽子をくれた従兄弟の剛くんは、伯母さんの息子で、僕より三つ上の大学三年生だ。松陰高校の卒業生でもある。 「剛、誰?」  剛くんの仲間たちが、僕をジロジロ見て来て居た堪れない。剛くんは僕の肩に手を掛けて言った。 「可愛いだろ。俺の従兄弟の玲。松陰高校の三年。玲も何か打ち上げみたいなやつ?」  剛くんに尋ねられて、僕はこっちを気にしているクラスメイトたちを振り返って説明した。 「文化祭の打ち上げ。執事メイド喫茶の売り上げが良かったんだ。」  すると陽キャの三浦君が近づいてきて、尋ねた。 「橘の知り合いだったの?こんにちは!え、従兄弟?開明大学?凄え、名門ですね。」  三浦君はスルスルと剛くんたちのグループの情報を引き出してしまった。僕は三浦くんの陽キャぶりに舌を巻いて、それでもあまり剛くんたちの邪魔をしてはいけないと、三浦君を引き剥がしてテーブルに戻った。 「橘、良いなぁ。開明大学の情報聞けるじゃん。」  三浦君の騒ぎように閉口した僕は、そそくさとフェードアウトして自分のテーブルに戻った。 「玲、まだ肉食うか?」  そう言って僕に尋ねてくれたキヨくんに、僕は首を振ってもう十分だと飲み物を取りに行った。ドリンクバーにはさっきの剛くんのテーブルに居た大学生が一人いて、僕ににっこり笑い掛けた。 「お?剛の従兄弟くんだ。…従兄弟くんてあんまり剛に似てないんだね。こんなに可愛いなんて、ちょっとあいつと血が繋がってるなんて信じられないよ。」  僕はクスっと笑って、優しそうな剛くんの友達に言った。 「剛くんは伯父さん似ですから。僕たちは母方の親戚なんです。」  大学生は僕をじっと見ると、にっこり笑って言った。 「ねえ、松陰高校なら、うちの大学も志望校だったりする?オープンキャンパス今度あるけど、来ない?良かったら案内してあげようか。」

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