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第36話 お誘いと小言

 剛くんの友達がオープンキャンパスに誘ってくれて、僕が返事に戸惑っていると、キヨくんがやって来て声を掛けてきた。 「玲、そろそろデザート来るって。」  僕は、剛くんのお友達に慌ててお礼を言うと、キヨくんの後をついて行った。キヨくんは後ろを見ながら、僕に尋ねてきた。 「さっきの人何だって?何か話してたろ?」  僕は何だかキヨくんが神経質になっている気がして、にっこり笑って言った。 「ああ、従兄弟のお友達みたい。開明大学で、今度オープンキャンパスするから、来るなら案内してくれるって。親切な人だよね。」  僕がそう言うと、キヨくんは眉を顰めて言った。 「従兄弟は兎も角、あの人は全然知らない人なんだから、直ぐに信用しちゃダメだぞ。玲は髪切ったら余計可愛いの周りにバレたから、もっと用心した方がいい。」  僕はキョトンとして、キヨくんに尋ねた。 「え?用心てどう言う事?」  キヨくんは嫌な顔をしながらボソッと言った。 「そう言うところ。あれだけ文化祭で注目浴びたのにまだ自覚ないところ。可愛かったら、男も女も関係ないんだ。俺だって玲が男でもキスしたくなっただろ。もう一回証明しなきゃ分かんないかな…?」  いきなりキヨくんに、あの時のことを引き出されて僕は一気に顔が熱くなってしまった。キヨくんはアレを無かったことにはしないみたいだ。それは僕にとって、困ったような、嬉しいような、なんとも言えない感情を連れて来た。  僕は焦って、キヨくんより先にテーブルに近づくと、到着していたケーキバイキングのトレーに歓声を上げた。小皿にケーキを取っていると、隣に来たキヨくんが僕にこそっと囁いた。 「まだ逃がしてやるけど、そのうち我慢できなくなるから。」  僕が口を開けてキヨくんを見上げると、キヨくんは何でも無かったような顔で、隣のクラスメイトと話し始めていた。僕は妙に心臓がドキドキしてしまったのを隠すように、もうひとつケーキを選んで皿に積み上げた。  ああ、さっきからキヨくんが言う事が意味深すぎて、僕の心臓が持たない。キヨくんが僕の事好きみたいな言い方するのは、僕の気のせいじゃないよね?  僕が甘いケーキをやけになって貪り食べていると、剛くんのテーブルのさっきの大学生と目が合って、手を振って来た。ああ、何だかあっちもこっちも、僕には手が余る事ばかりだ。…ケーキ美味しい。

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