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第2章 龍は物々しい

    1  バレンタイン当日。  平日なので、仕事が終わってからチョコを渡した。  自宅。 「俺に?」龍さんはびっくりした様子だった。 「職場でもらったりしてないんですか?」 「女性がいない」 「開けてください」 「いいのか」 「はい、龍さんにあげたくて買ったんです」  龍さんはしばらくパッケージを眺めていたが、丁寧に包み紙を開けた。 「どうですか?」 「高かったんじゃないか」 「それは、まあ、そこそこ」もしかして。「知ってるブランドですか」 「いや、チョコは詳しくない」 「食べてみてください」 「いただきます」龍さんは四角いチョコを口に入れた。「美味いな」 「よかった」 「一緒に食べないのか」 「いいんですか?」 「こんなに食べれないよ」 「じゃあ、一つ」  美味しい。  試食したときより全然美味しいのは、龍さんと一緒に食べてるからだろうか。 「それと、もう一つプレゼントがあるんですが」 「なんだ?」 「俺です」 「?」龍さんは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに思い当たったようだった。「いいのか? 先生は」  先週の金曜に先生に確認した。  バレンタインの日くらい、イチャイチャしてもいいかどうか。 「俺の具合、だいぶ良くなってきてるんです。だから、いい」って。がかき消えた。  龍さんが俺を抱きしめた。 「久しぶりだから、酷くしてしまうかもしれない」 「いいですよ、好きに抱いてください」  ベッドまで遠かった。      2  いいと先生から許可があるなら。を、免罪符に激しく求めてしまった。  本当に久しぶりで。  先生の言いつけを守って、禁欲的に過ごしていたから。  久しぶりの白光《しろひ》は、はっきり言ってやばかった。  抱いても抱いても収まらない。  もっともっと欲しくなる。  なんか、色気が増していないだろうか。  年齢的なものだろうか。  俺は俺で、白光が気を失う寸前で留められるようになった。 「龍さん、好き」白光がうっとりした表情で言う。 「やめろ。せっかく止めたのに」 「回数まで指定はなかったので」 「煽るな。壊しそうになる」 「大切にしてくれてるの、わかってますから」  白光の頬を撫でた。  白光がくすぐったそうにした。  幸せだ。  こんなに幸せで。 「ありがとう。言ってなかったな。わざわざ買いに行ってくれたんだろ?」 「いえいえ、結構楽しかったですよ」  二人でシャワーを浴びてから、ベッドで二人で横になる。 「寝るか?」 「もうちょっと話したいかも」白光がニコニコしながら言う。 「付き合うよ」 「あ、明日も仕事だった」  白光は少しずつだが仕事に復帰しつつある。半日勤務をしている。 「龍さんは幸せですか?」 「ああ、幸せだよ」 「俺も、最近ちょっとわかってきたような気がしてて」 「そうなのか」 「龍さんとの一緒の時間とか、こうやって一緒に寝てるときとか、ああ、いいなあって思うんです」 「そうか」白光を抱きしめた。「俺もだよ」  とりあえず明日は先生にお礼のメールを送らないと。  いや、いっそホワイトデーに何か美味しいものを贈るべきか。

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