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見たことがない人混みに混乱していたのか、それとも強がって見せたのか、周りへの配慮を優先してしまい、置いてきたボードを持ってくれば良かったと思うぐらい大河が素直に頷かなかった理由がはっきりと分からなかったものが、伶介によってやはりと確信に変わった。
しかし、差し出された大河は手を繋いでいいものかと伶介の手をじっと見ていた、かと思うと、顔色を伺うように伶介のことを見た。
そうしているうちに、伶介の方から手を取った。
「いこっ!」
にこっと笑いかけた伶介は驚いているような顔をする大河を、やや強引に連れだした。
「伶介君、カッコイイッスね」
「でしょう! お友達が皆の輪に入れなくて困っている時にも、ああやってやってあげているみたいです。本当にあの子は優しくていい子で⋯⋯っ」
玲美の声が震えている。きっと自慢の我が子の行動に感動しているのだろう。
姫宮もその伶介の大河のことを気にかけてくれる純粋な優しさにどれほど救われていることか。
感謝してもしきれない。
「ままー! ままたちもはやくー!」
こちらを振り返った伶介が空いている片手を振ってくる。
大河も目で姫宮に来て欲しそうに訴えていた。
「はいはーい。私達も行きましょうか」
「はい」
玲美に頷いた後、揃って中へと入っていった。
入ってすぐから暗い館内に大河が早くも怖気づいているようで、伶介と繋いでいる手とは反対の手を握ってきた。
水槽の明かりで真っ暗ではないが、やはり初めて来たところであって、周りに見知らぬ人達がいることに不安を覚えているのかもしれない。それは致し方ないことだ。
早々に帰宅かなと姫宮はそう思っていた。
「たーちゃん、あそこのゆかになにかいるみたいだよ」
伶介が指差した。
進行方向の先に階段があるらしく、その登った箇所に何人かがその場にしゃがみこんで何やら覗いている様子だった。
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