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8.
「ちちのようなりっぱなひとになりたいので、みならっているんです」
「パパのことをめっちゃ立てるじゃん。尊敬ヤバ⋯⋯」
「俺にはなかなかできんことだわ」とヤバヤバと言いながら賛辞を述べていた。
「袋田さん。仲を深めるのもいいことですが、時間がありますので」
「あ、ヤベ! ささ、皆さん行きましょうか!」
にこりと笑っているような怒っているような雰囲気を滲ませた安野の殺気を感じた袋田はぶるりと身体を震わせ、慌てた彼に促されるがまま外へと向かった。
「気をつけて行ってらっしゃい」という安野達の見送りの言葉を背に受けて。
袋田の運転する車に揺られて、しばらく。
水族館に着いた。
テレビで観たそれが自身の目で見る光景が信じられず、夢を見ている気持ちになっていたが、そんなぼんやりとしている場合ではない。
世間は休日。それなりに混んでいる施設の中でそんな気持ちで行ったら人に迷惑をかけるかもしれないし、大河が迷子になってしまうかもしれない。
今も繋いでいるこの小さな手を離さないようにしないと。
その我が子は初めて見る水族館の前で、ぼうっと見つめていた。
初めて行く場所であるし、それに産まれて初めて見るのであろう、あまりの人の多さに緊張しているのかもしれない。その場から一歩も動こうとしない。
「大河。人が多くてびっくりしてる?」
しゃがんで尋ねると、頷きかけたが、思いきり首を横に振り、手を離した大河が駆け出して行った。
「大河っ!」
息子と繋いでいた手を思わず伸ばしていると、その後を追う者がいた。伶介だ。
入場口付近で立ち止まった大河に声をかけた。
「ひとがいっぱいなの、ぼくもなれないよ。けど、すこしでもきにならないほうほうがあるんだよ」
口元に人差し指を当てた伶介はこう言った。
「てをつなぐこと! てをつないだらね、ひとりじゃないっておもえるし、それにね、すいぞくかんはほぼくらいから、こわくもないとおもうんだ」
手を差し出した伶介がにっこりと笑いかけた。
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