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「そうッスか〜?」と袋田が返事する傍ら、姫宮は玲美のその方法になるほどと感心していた。
袋田が言っていたような片方だけ集中する方法ではなく、両方したいから両方する方法をすればいいのだと。
一つだけしかしてはいけないとは誰も言ってない。
両方したいのならしてもいいと、欲張っていいのだとそんな風に捉えた。
「⋯⋯それって、いいですね」
心の内の言葉が漏れた。
そう自覚したのは、「そうですよね!」と玲美が声を上げた時だった。
「やっぱり、可愛い可愛い我が子を撮りたいし、そのちょっとした瞬間も目に焼き付けたいですよね! 心のシャッターというものを!」
ねー! と一際声を上げて、共感を求める言い方に、たじろぎながらも小さく頷いた。
「まま!」
言葉を遮るように伶介が呼んだ。
「ぼくのことがだいすきなままと、たーちゃんのことがだいすきなままにおねがいがあります」
改まった口調に玲美が「どうしたの?」と尋ねた。
すると、大河と繋いでいた片手を離し、今度はその手を玲美に差し出した。
「てをつないで、このうえにのってほしいの」
改まって何を言い出すのかと思えば。
玲美もそう思っていたようで、こちらに顔を見合わせた時、苦笑にも似た表情をし、再び伶介達に向けた時は、「そのぐらいお安い御用です」と満面な笑みを見せた。
玲美に続いてその場に立ち、それから二人がすぐに手を繋いで笑い合っているのを隣で見ている時、裾を引っ張られる感覚があった。
驚いて振り返ると、大河が引っ張っていた。
「⋯⋯ま⋯⋯、⋯⋯」
自分達の周りの声にかき消されそうな大河の声。
しかし、姫宮の耳にははっきりと聞こえ、さらに目で訴えているのをひしひしと感じた。
松下親子よりも自分を見て欲しい。さっさと繋いで欲しい、というような。
実際に小さな手を目一杯突き出してくるのだから。
「ごめんね、大河」
困り、苦笑しているような顔をし、その手を繋いだ。
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