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一旦の休憩を兼ねたお昼でひとまず機嫌が直ったらしい大河は、伶介と一緒にお土産コーナーを巡っていた。
お昼の時、主に伶介が大河が好きそうな話題や可愛らしいチンアナゴやクラゲの形をしたパンを食べたことで気を良くしたのかもしれない。
伶介は水族館に来た時から気を回してくれて、感謝の言葉しかなく、本当に頭が上がらない。
どうしたらそのような子に育つのだろう。
「ままー、これかって!」
玲美達と揃って子ども達の様子を見ていると、ぬいぐるみコーナーにいた伶介と大河がこちらに駆け寄ってきた。
その手にはチンアナゴやクラゲ、ペンギンのぬいぐるみをいっぱい抱えて。
「二人してこんなにも抱えて。せめて持って帰れる分にしてくれないと」
「えー? どれもこれもかわいいし、たーちゃとおなじものをかいたいの!」
ねーとにこにことした顔を大河に向けると、力強く頷いた。
「可愛いのは分かるけど、伶介が可愛いぬいぐるみを抱えている姿はいつも以上に可愛くて仕方ないけれど! 最低二つまでにしようね」
「えー!」
「⋯⋯ぇ⋯⋯」
言いながらあらゆる角度で撮りまくっている玲美に抗議するように伶介は言い、それを真似するように大河なりの言葉を発していた。
そんな中、姫宮は人知れず驚いていた。
よく見てきたのは、礼儀正しく聞き分けの良い子だった。そんな子がこんな年相応なところを見せるだなんて。
玲美が何言っても聞かないのは、結局は大河のためでもあるのだろうか。大河と同じ物を買いたいと言っていた。
そうだとしたら。
「⋯⋯あの。私が払いましょうか」
「えっ、姫宮さん?! いえいえ、そんなことしなくていいのですよ。姫宮さんもお子さんのことが好きとはいえ、無理しなくてもいいのですよ」
自分のことよりも他人のことを優先してしまう姫宮のことを心配しているのかもしれない。
しかし、今回はそういうことではなかった。
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