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その冗談混じりで言っているのも、子供達が怖い思いをさせないためだろうか。先ほどの素早い行動といい、気配りが素晴らしい彼に称賛をしたいところだ。
「ふくろださん、すごいです!」
伶介が両手を拳にして、力強く言った。
「さっきのだれにもきづかれないようにとりおさえるの、かっこよかったです!」
「え? マジで? へへっ、こんなにも真正面で言われるの、めちゃくちゃ嬉しいんですけど〜」
照れるな〜と頬を赤らめた袋田は頭を搔いた。
「たーちゃんもかっこいいとおもったよね?」
姫宮の足元にくっついたまま離れない大河に目線を向ける。
しかし、大河は伶介のことをじっと見つめたまま、うんともすんとも反応を示さない。
今朝挨拶した時も嫌そうな顔を浮かべるほどだ。たとえ「かっこいい」と思っていても、素直に頷かないのだろう。
「なんスかなんスか〜? 照れ隠しですか〜?」
袋田が目にも止まらぬ速さで間合いを詰めてきた。それも満面な笑みを浮かべて。
姫宮達がそのあまりにも速さに改めて圧巻されていると、同じように呆然としていた大河がふと我に返ったかと思うと、姫宮の後ろに隠れた。
「恥ずかしがって〜。いいんスよ、素直に言ってもらっても!」
そう言いながら、背後に回ろうとする袋田から逃れるように大河は前へと回った。
しかし、袋田は先を読んでいたらしく一歩先に前へと来ては、大河を驚かせていた。
それでも負けじと大河はまた後ろへと回り、大河にとっては本気で、袋田にとっては半ば遊びが始まってしまった。
「あ、あの⋯⋯二人とも⋯⋯」
控えめの姫宮の声はすぐにかき消されてしまった。
そのうち、にこやかな笑みを見せた玲美の一言と、最終手段といったように大河がよじ登ろうとしたところで終了した。
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