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立派だね 3

討伐第1部隊に配属された、実習生のイスタ・エイブラムスが、ノエルの姿を見つけ、近づいて来る。 菫色のふわりとした髪の毛をツーブロックにしたヘアスタイルで、身長も高く小顔で、モデルような容姿をしていた。 イスタは、実習生ながら聖剣を使うことができるということから、正式な資格はまだ取得できてはいないものの、魔術騎士に準ずる扱いとされている。その為、支給された深紅のマントを身に纏っていた。 「イスタ!どうしてここに?」 「ここの扉、|討伐第1部部隊《ウチの部隊》が新しく修復したんですよ。順番で見回ってて…俺が今日の当番なんです」 ノエルが爆破した扉は1週間の間に見事に修復されていた。より堅固な戸に生まれ変わり、新しい鍵も付与されていた。 「そっか…イスタ達が直してくれたんだよね。その…ごめんなさい。本当は修復の手伝いを申し出たんだけど、フェルナンさんに断られたんだ…」 リッツェンに治療してもらい、回復した翌日、ノエルは扉の修復を手伝おうと、こちらの武器収容庫を訪れたのだが、リッツェンの側近でもあり、魔術士のフェルナン・ルシアノににべもなく断られ追い返されていた。 『力の無い者など現場では邪魔です』と言われ、仕舞にはなぜか、リッツェンに治療してもらったことを持ち出され『特別にご寵愛を頂いたなどと思い上がらないように』と謎の小言までもらっていた。 「ノエル・リンデジャックさんが吹き飛ばしたんだって聞いて、さすがだなって思いましたよ。同僚を助けたとも聞いてます」 イスタのサファイアブルーの瞳が、キラキラと輝いてノエルを見つめる。 ノエルはそれほど褒められたことではないと気恥ずかしくなり、話題を変えることにした。 「あのっ、扉の鍵!新しくなって聞いて…少し見てもいいかな?」 「もちろん、良いですよ。あっ…でも、もう壊さないでくださいね?」 イスタはそう言うとイタズラっぽい視線をノエルに向けた。 ノエルはそれを聞いて、口元に手を軽く当てふっと笑いながら「大丈夫、もう壊さないから」と返す。 「…っ!?その顔っ、可愛すぎませんか…?…いえ、何でもないです。朝からありがとうございます。はい、これが新しい鍵です!」 イスタは1人で勝手に焦ってそう言いながら、新しい鍵の前にノエルを案内する。 ノエルはお礼を言われて謎に思ったが、新しい鍵を見せられて、そんな疑問も吹き飛んでしまった。 「これが、新しい魔術…」

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