31 / 63
立派だね 5
イスタは、鞘におさまった聖剣を握った。
「これは、王立魔術師団学校に入学する時に、支給されたやつです。俺は、オラクルの平民出身で…たまたま派遣されてきた討伐部隊の物資支援を手伝った時、偶然聖剣が使えることが分かったんです」
聖剣は、聖霊の加護を得た聖樹を使用して精製された剣だ。
この剣は、ただ魔力があるだけの者が使用しても効能を発揮せず、適性がある者にしか扱えない代物であった。
聖霊の加護の力を借りることができ、魔物の討伐や、聖樹の葉を採取する時に使用されていた。
「そこから、多分運が良くて…能力のある者を引き立てている地元の領主のエイブラムス家に目をかけてもらって、養子になりました。俺は両親が居なくて、歳が離れた姉に育ててもらったんです。養子に入る時、実家に援助もしてもらえたので助かりました」
イスタは苦労など微塵も感じさせない雰囲気で、自身の身の上話を淡々と語った。
「そっか…イスタも…立派だね」
ノエルは両親が居ないと言ったイスタに心の中で密かに共感できるものを感じていた。
ノエルの実の母は、5歳の時に亡くなり、父親はどこの誰かさえ知らない。
実の両親が居ないのはノエルも同じであった。
育ての両親に愛情深く育ててもらった為、幸せではあったが、自分の出自については、気を許した人達にでさえ言う事ができないという秘密を抱えていた。
「僕は、聖剣を扱う適性が無いから…イスタの能力が実は少し羨ましいんだ。聖霊には会ったことがあるんだけど、僕には剣は扱えないって許してもらえなかった」
ノエルの母、楠木カレンの生前、ノエルが5歳まではノエルの家の庭先に聖霊がよく遊びに来ていた。
しかし、カレンが亡くなってから、聖霊が訪れることはほとんど無くなってしまった。そのあと一度聖霊に会っただけで、それ以来ノエルは聖霊に会えずにいた。
「聖霊に会ったことがあるんですか!?俺なんて見たことすらないです…その上会話したなんて、凄すぎる」
ともだちにシェアしよう!

