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気になるあの人 2 ※イスタ視点

珍しくノエルは朝から大きめの声を出している。そんなノエルの部屋から見知らぬ男がノエルに続いて出てきた。 魔術師の証である黒いマントを纏っている。ボルドー色の髪をセンター分けにしている。 (えっ…今同じ部屋から出てきたよな…) イスタが思わず立ち止まり訝しんで2人を見ていると、魔術師の男が鋭い視線を一瞬こちらに向けた。そして、ノエルの頭に自分の頭を乗せて、きゅっと抱きしめた。 (――はぁっ??) 「ちょっと…頭重たいって…!今日は朝から大事な会議なんでしょ?早く朝ごはん食べないと…ほらっ…」 ノエルはそう言うと、魔術師の男の腕を振りほどいて、逆に男の腕を引いて食堂まで誘導する。 「ノエルちゃん、歩くの早いヨー」 魔術師の男はそう言いながらも嬉しそうに、ノエルに腕を引かれたまま食堂に向って行った。 「――わっ!びっくりした!」 2人を見つめ、呆然と廊下に立っていたイスタの姿に自室から出てきたコニー・ユーストマは驚き、声をあげた。 「…!!ユ、ユ、ユーストマさん!!ノエルさんと一緒にいる…あの魔術師の男は一体…??」 「こんなところに突っ立って邪魔と思ったら、ノエルに懐いてる後輩君じゃん。イスタ…だっけ?…ノエルと一緒って…ああ、アレね。ノエルと同郷の魔術師のニック・ハーヴィ。王立魔術研究所で働いてるんだけど、数日仕事でこっちにいるみたい」 コニーは、もう大分遠くに行ってしまっているノエルとニックの後ろ姿を見ながら、イスタにそう答える。 「同郷…?2人、同じ部屋から出てきましたけど…しかも、俺が見てるのに気づいて、ノエルさんのこと抱きしめてました…」 「マジ?ハーヴィの執着ヤバっ!!まぁね~、ノエルにとっても、ある意味特別っていうか…ハジメテの男って良くも悪くも心の別ポジにいたりするしぃ…」 「コニー?」 イスタとコニーの後ろにいつの間にか、エミン・グスタフが立っていた。コニーは、思わず話しすぎたと口を押さえる。 「あっ、ごめん、話しすぎちゃった!イスタ、今の話は忘れてっ」 エミンは「個人情報…」とコニーを注意する。コニーは「ごめぇん」とエミンに両手を合わせて謝っている。 (ハジメテって…まさか…そういうことか!?) イスタは、顔を青くして廊下に立ちすくんだ。 もちろん、忘れられるわけが無かった…。

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