63 / 63
白い幻獣 5
「――ランドルフ隊長、何てことを…!?へっ、変態だぁ」
イスタは、側に立っていたノエルを、ランドルフから遠ざけるように抱きしめる。
「――わっ」
ノエルは突然イスタに抱きしめられて、よろめいた。そんなノエルをイスタは抱きしめたままだ。
「ランド…てめぇ、まさか、討伐部隊の拠点で犯罪行為を…」
メイは、呆れ顔でランドルフを見る。
「ちょっと待て!そういうんじゃなくて…壮行会の直前、あのショーの時の衣装のまま、ノエルが履いてるのかどうかわからないような下着姿を見せてきて、そんな無防備な姿を他の隊員達にも晒してしまったら困ると思って、どうなるかを教えたんだ」
「だからアレは、ちゃんと履いてました!」
ノエルは焦ってそう発言する。履いていたことがどうやら重要らしい。
イスタは、腕の中のノエルを思わずじっと見つめる。その場にいた他の者たちも、一体どんな下着だったのか…?と考えながら、ノエルを見ていた。
ちなみに、壮行会が終わった後、着替えてから執務室に連行されたため、ノエルはいつもの深緑のマントを身に着けていた。もちろん、下着も通常のものを履いている。
「とにかく、そうしていたら、ノエルが『魔力の交換』に慣れたいと話してきて…キス以上の行為で試したんだよ。時間もなかったし、それだけだ」
「…それで、ノエルの魔力量が著しく増加し、おそらく魔力の質にも影響したのかな…それで、あの幻獣を作り出したと」
リッツェンはそう答えを導き出すと、ノエルを抱きしめたままのイスタにすっと視線を向ける。
「…エイブラムス、そろそろ離れなさい」
フェルナンは、リッツェンの意図を察し、はぁとため息をついて、イスタにノエルから離れるように命じた。
イスタは名残惜し気に、ノエルを抱きしめていた腕を解く。
「あの白鷺火は、まさか本物じゃ無いと思うが…どこへ消えたんだ?治療魔術の光が、勝手に動くなんざ聞いたこともねぇよ」
ともだちにシェアしよう!

