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第42話 ねぇ

 わかってる?  ねぇ。 「あ……翠伊、くん」  そんな甘い声で俺のこと呼んだりして。  わかってないでしょ? 「へ、き? あの、僕と、その」  ほら、今さら、そんなの確かめる辺り、やっぱわかってない。 「ンっ……」  だから仰向けで寝転んだ桜介さんの唇に深く濃く口付けた。肘をついて、細いこの人を押し潰しちゃうことのないように気をつけながら、でも逃げることはできないように、腕で閉じ込めながら。 「ん、ふっ……ン、ンんっ」  舌を差し込んで、まだ答えることにいっぱいいっぱいのこの人の舌を捕まえて。 「ンンっ」  角度を変えてながら絡ませて、何もわかってないこの人にもわかるように、熱っぽいキスをする。 「あっ……っ」  キスを止めて少し上体を起こして離すと、交わし合って濡れた糸がおお互いの唇を繋げてた。それに気がついて、真っ赤になってる。 「そ、そ、それにっ、そのっこ、こういう時、その、僕、してもらったから、今度は、僕がしてあげないと、でしょ?」  キスで濡れて赤くなった唇を大慌てで動かしながらさ、何、言い出すの? 「その、口で……フェ…………ら」  やっぱ、わかってない。 「だから、その、僕も、ン」  ほら、わかってない。  だからもう一回キスをした。 「それは次の時ね」 「次っ」 「そう、次。今日はもう無理」 「え、無理っ」 「限界」 「えぇっ」  そこで、慌てて起き上がろうとするあたり、ね、焦ってるし。ちょっと、そういう意味じゃないってば。だから起き上がるのを阻止するように覆い被さって、その手を掴んだ。 「!」  引っ張って、触らせたのは。 「早く、桜介さんが欲しいんで」 「!」  触れば、わかる?  ガチガチになって、笑っちゃうくらいなんだって。 「桜介さん、ちょーだい」 「……ぁ」  欲しくて、欲しくてたまらない。  独り占めしたい。 「いい?」 「あ」  貴方とセックスの続きが早くしたい。  それが伝わるように額をくっつけた。 「ぅ、ん」  そして、細い手がガチガチになってる俺のを撫でてくれた。 「っ」  息、止まるから。貴方に触ってもらえて、硬さを確かめるように撫でられて。 「おっきぃ……」  そんなこと呟かれたら。 「あんま煽らないでってば」 「っ」 「こんなに夢中なの初めてなんだから」  ほら、ゴムつける手がちょっと不器用になってる。不慣れな童貞みたい。それに苦笑いを溢して、一つ、深呼吸をした。シャワーを浴びたから髪はセットしてなくて、俯くと前髪が視界を遮った。それをかき上げて、自分のベッドに横たわってる好きな子を見つめた。  ゴージャスなランジェリーを、今日、俺とセックスするために身につけてきてくれた人。  見て欲しいって、震えながら、小さく呟いて、あどけなくて、天然で、魔性で。一生懸命に、俺のこと、好きで頑張ってくれる人。 「夢中……」 「うん。夢中です」 「っ」  好きでたまらない。 「ン」 「挿れるね」 「……ぁ」  早く、この人のこと。 「あ、あぁぁっ」  独り占め、したい。 「っ」 「あ、ンっ……っ、っ」  中は熱くて、ぎゅって俺のに絡みついてきて、すごく狭い。 「あ、あ、あっ翠伊っ、くんっ」 「うん」 「あ、おっきい、よっ」 「ごめん」 「あ、翠伊くんっ」 「掴まって」 「ひゃあぅっ、あっ、おっきいっ」 「あと、それ、禁句。煽りすぎっ」 「煽って、なっ、あ、あ、すごい、おっきいっ」  だから煽らないでってば。  ゆっくり、けど、しっかり中を抉じ開けた。狭い内側はきついけど、柔らかくて、熱くて溶けちゃいそうだけど、心地良くて。  桜介さんの、中。 「あ、あっ」 「シーツじゃなくて」  掴まってと言われて、慌ててしがみついたのがシーツなのが可愛い。 「こっち」 「あっ、あっ」 「俺にしがみついてて」 「あぁぁっ」 「ゆっくり、するから」 「あ、ンっ」  言われて、俺の首に腕を絡ませて、甘い声を溢してる。 「ひゃっン」 「ここ、気持ちいい?」 「あ、わかんなっ」 「中がぎゅってした」 「あ、だって、翠伊くんが入ってるの、感じる」 「っ」  天然で、素で、俺のことまた煽っちゃうし。 「嬉し……」 「桜介さん」 「あ、あ、あ、すごっ、あ」 「やば」 「あぁっ」  気持ち良さそうに蕩けた顔が可愛い。  俺が動くのに合わせて、背中を逸せて喘いでる。真っ赤になった頬も唇も、きっと、全部俺ので。 「桜介さん」 「やぁ……ン」  名前を呼ぶと、中が締め付ける。 「ン……ン」  キスしながら中を擦り上げると、切ない声を溢して、腕に力を込めてる。 「あ、あっ、翠伊、くんっ」 「っ」 「好き」  唐突に告白とか、ほんと、反則級。 「やば……」 「あ、あ、すごっ、いっ」  痛くないところまで、深いとこは、まだ、だから。だから、桜介さんが気持ちいいって感じるところをたくさん可愛がりながら。 「ン、ん」  キスで触れて、身体を繋げて。 「翠伊くんっ」  そう、せつなげな声で何度も名前を読んでくれる。声も、肌も、何もかも甘い。 「あっ、あ、あ、あ、激し、いっ」 「うん」  甘くて、全部欲しくなる。 「ひゃあうっ」  ドレスみたいなランジェリーをずらして、とろとろになってる桜介さんのを握ったら、中が甘く切なく絡みついた。頭の芯、溶けそう。覚えたはずのハウツーが全部頭から吹っ飛びそう。 「あ、あ、はみ出てっ、あ、待って、前、ダメっ、ダメっ」 「うん」  頭ん中、真っ白になる。 「あ、あ、も、あっ……」 「桜介さん」 「あぁっ」  ねぇ。 「あ、ダメっ、僕っ」  初めて、だ。 「だめ、イッちゃっう、あ、あ、あぁぁぁぁぁっ」 「っ」 「あっ……翠伊くんのっ……」 「はっや……」 「?」  好きな子とこうしてセックスしながら、愛しい、なんて思ったの。 「桜介さんの中がすごくて、イクの早すぎ、俺」 「……あっ、ン」  この人のことが愛しくてたまらないって思ったの。  初めてだって、わかってる? 「……あ……ぁ」 「っ」  俺にしがみつく腕が力むのをやめて、ただそっと、優しく掴まってる。 「……ぁ」 「……平気? 桜介さん」  無我夢中だった。もっと優しくするつもりだったんだ。桜介さんのこと、ほんの少しだって傷つけることのないようにって。 「あの、翠伊くん」 「? どっか痛い?」  覗き込むと真っ赤になりながら首を横に振った。 「も、もう一回、頬、触ってもらっても、いい?」 「?」 「夢、じゃないか、確かめたい……です」  ねぇ、魔性の桜介さん。 「じゃあ、さ」 「?」 「俺の頬も触ってよ」  貴方にとってキスもセックスも初めてだけど。  俺もなんだ。 「俺も、夢じゃないか確かめたい」 「……ぁ」  貴方は俺にたくさん初めてをくれる。 「はい。あの、夢じゃない、よ……」  キス、好きな人からしてもらえたキス一つで、こんなに嬉しくて、まさに「有頂天」って感じになったのも初めてなんだ。 「夢みたいだけど、ちゃんと夢じゃない、です」  そして確かめるように震えた唇がぎこちなく触れた。

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