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浴衣の君と編 9 レースがちょっと、ないみたい

 じゃあ、部屋でイチャイチャしてようよ。  そう言ったら、桜介さんが真っ赤になって、けど、頷いてた。 「す、翠伊くんっ、あのっ、下着、変えても、いい?」  真っ赤だけど、ちゃんと頷くし、ちゃんと「夜」に備えてお気に入りの下着とか持って来ちゃうとこ。 「あっ、でも、恥ずかしいのでっ、目を瞑っていただけるとっ」  けど、着替えてるところは浴衣でも下着でも恥ずかしがるとこ。 「はーい」 「ご、ごめんねっ。わざわざ」  素直に従って目をぎゅっと瞑って。 「! あっ、まだっ待っ」  パッて開いたら、まだ着替え終わっってないですって、慌てて、今、旅行バッグから取り出した一枚をぎゅっと手で握って隠すとこ。 「ごめんごめん」 「…………って、あのっ、まだだってば」  わざとまたすぐに目を開けてるのに、俺がせっかちで自分がもたついてるって思っちゃうとこ。 「履くとこも見てみたい」 「! そ、それは、ダメでっ、つ、瞑ってくださいっ」  全部丸ごと可愛いし、好きって思うんだ。 「えー? じゃあ、これで目隠しは?」 「ひゃえ?」 「はい」  そして、いいこと思いついたって、近くにあった、予備の浴衣の紐で自分の目元を隠してみた。  完全に見えなくなってから、手を後ろについてのんびり座ってると、布が擦れる音が聞こえた。それからすぐに、近くに、桜介さんの気配を感じて、徐に顔を上げた。 「き、着替え、終わった、よ」 「うん」 「っ、ン、あのっ、目隠し取らないの?」 「んー、ちょっとこれはこれで楽しいよ」 「あっ」 「触って、どれ履いたのか当ててもいい?」 「あっ……っ」  きっとお気に入りのでしょ? なら、あれか、あっち、かな。どれもお気に入りなんだろうけど、その中でも特にっていうのをいくつか頭の中で思い浮かべながら、浴衣の上から腰を撫でて、お尻に触れる。レース、っぽい? かな。けど、真ん中が……。 「?」  こういうの持ってたっけ? 「あ、当てられ、ないっ、よっ……ン、んっ」 「……」 「今日、の、旅行にって買っちゃった。新しいの。でも、あのっ」  真ん中、お尻の割れ目のとこ、レースが途切れてる。 「そうなの?」 「あっ、あのっ、あのっ、目っ」  ほら、ない。 「やっぱり、目隠ししたまま、がいいっ、あのっ、えっと」  そう言って、腰紐で目隠しした俺の目元を両手でぎゅっと押さえてる。 「や、やっぱり、ちょっと、間違えちゃったっ」  ね。ここ、お尻の割れ目のとこ、レースがないよ。 「いつもの感じじゃないんだっ、いつも買ってるところのっ、だけど、その、セクシーな感じのっ、で」 「……」 「旅行っ、行けるの嬉しくてっ、はしゃぎながら買っちゃったんだっ。だからなんというか勢いで買ったのでっ、その、翠伊くんが引いちゃうかもっとか、考えてなくてっ、今、すごく恥ずかしくてっ、だからっこのままっ」  今、桜介さんどんな顔してるんだろ。 「僕がセクシーなの、似合うわけないのに……」  どんな貴方もすごく好きだから。 「……見てもいい?」 「っ、ダメっ、あのっ、脱ぐからっ、ちょっと待ってっ」 「やだ」 「っ、わっ、あ、待って」  頭の後ろで結んでた腰紐を解くと、大慌てで桜介さんが目元を押さえてた両手に力を込める。 「見せてよ」 「やっ、あのっ」  浴衣の裾を捲って、直に触れると、繊細なレースとクロスしたリボンがあった。けど、やっぱりそのレースはお尻の割れ目のところにはなくて。真ん中のラインが割れてる。 「あっ、待っ、っ」  触ってって言ってるみたいに、そこだけレースがなくて。 「あっンっ……ひゃっ……っ」  貴方の奥に触れられる。 「あっ」 「えっちな下着」 「っ、あのっ」 「見たいな」  真っ赤?  恥ずかしすぎて、困ってる?  目、潤んでて綺麗なんだろうな。 「見せて?」 「あっ」  交差してる紐を指に絡めると、きゅっと引っ張られて、桜介さんが小さく甘い声をあげてくれる。 「前は?」 「っや、ぁ」 「レースだ」  腰が揺れてる  恥ずかしくて、でも、気持ちよくて、興奮して、きっとクラクラしてる。 「じゃあ、手で押さえたままでいいよ」 「あっ」  前はレースで、リボンがついてた。それからチャームみたいなのが一つぶら下がってる、かな。細い、繊細なチェーンが指に触れる。先端にはガラスがくっついてるっぽい。前のレースは膨らんで、窮屈そうで、撫でてあげると、目を覆ってる桜介さんの手が震えてた。 「やぁっ……ぁ」  腰には紐があるだけ。その紐をなぞるように指で辿って、尾てい骨の辺りで交差してる紐から、今度は、レースがまるで避けるようになくなってる真ん中を指でなぞる。 「あっ」  そこだけレースがないから、すぐに触れて。 「桜介さん、目、見えないから、俺の代わりに、ローションとって?」 「っ」 「ありがと」  まだ意地を張って隠そうとする桜介さんに口元で微笑んで。ローションを片手で受け取ると、桜介さんの背後で手に出した。 「あぁっ」  濡れた指を、桜介さんの孔に滑り込ませた。 「あ、あ、あっ」  小さな孔がキュンって指を締め付ける。 「あっ……ふっぅ……ンっ」  中、熱い。 「あ、翠伊くぅ……ン」  指、溶けそ。 「桜介さん」 「ぁ、翠伊くんっ、笑わない、で」  甘い声がせつなげにそう囁いて  手が解かれると。 「ン、キス、したい……です」  そう言って、瞳を潤ませた桜介さんが俺にしがみついてくれた。しばらく視界を塞がれてたからかな、チカチカと目が驚いて、瞬きを何度かしてから。 「俺も……」  真っ赤になってる桜介さんに見惚れながら、そっと、深く。 「ン、翠伊くんっ」  とろけそうに甘いキスをした。

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