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『いつの日か会えるまでここにいるから──』
多くの客で賑わうバーに響き渡っていた歌声は、すっと消えていった。
声の主であるロイドは、少し頭を上げて、視線だけでさり気なく客席を見渡す。多くの視線がロイドが立っているステージに向けられており、誰もが嬉しそうに見えた。
同時に、大きな拍手がどっと湧き上がってきた。
「ありがとうございます!」
今日も多くの客に喜んでもらえた。ロイドは笑顔を振り撒くように店全体を見渡した。
皆に改めて感謝を示すために深く頭を下げる。再び湧き上がる拍手に包まれながら、ロイドはステージを下りていった。
客席から『ありがとう!』という言葉を間近で投げかけられ、ロイドは手を振って返しながら歩いていく。
「今日もよかったよ、ロイド!」
すると、粘着した声が周囲の会話を遮る大きさでロイドを呼び止めた。声のした方へ顔を向けると、中央のテーブルを陣取って座る中年の男がいる。顔を赤くして明らかに酔っている男は、上機嫌でロイドを手招きしている。
正直なところ、ロイドはこの男のことが苦手である。特に酔っている最中は可能であれば近寄りたくない。けれども今は仕事中、機嫌を損ねて売上がなくなってしまうことは避けたい。必死に笑顔を作ったロイドは男に近付いていく。
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