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「今日もありがとうございます」
「ほら、こっちこっち」
男は、ぽんぽん、とソファを叩いてロイドが座るよう促す。恐らくこの調子だと今日は閉店まで男の相手をしなければいけない。
出そうになった溜め息をなんとか堪え、ロイドは男の隣にそっと座る。
ニヤリと笑った男は、太もも同士が触れ合う距離まで詰めてきた。嫌悪感で思わずビクリと震えてしまったが、笑顔を保って平静を装う。
「ロイドは何歌ってもいい声だが、やっぱり今日の歌が一番上手いな」
ははは、と、粘着した声意外何も聞こえないような笑いをする男。ロイドは男を喋らせていることに申し訳ないと思いつつも、男との会話をそのまま続ける。
「僕、あの歌がとっても好きなんです。恋っていいなーって思うので」
「はっはっはっ。恋は人間しかできないからな。しょせんアンドロイドなんて、組み込まれて動いてるだけだ。感情なんてないない」
男は笑いながらグラスに残っていた中身を一気に煽った。空になったグラスを見つめ、はぁ、と盛大な溜め息をつく。
「まだまだ飲み足りねーな。おい、そこのお前。ぼさっとしてないで早く次を持ってこい」
男は近くにいたウエイターに、まるで怒りをぶつけるように冷たく言い放った。
無表情のウエイターは一礼してその場を去る。すぐに新しい酒が入ったグラスを置き、再び無言で去っていった。
「はぁ。あいつらもロイドみたいに愛嬌があればいいのにな。ま、アンドロイドには無理か」
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