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「大丈夫?」
先ほどまでとは全く異なる、とても優しいものだった。鋭い視線を向けることができるのが嘘のように柔らかな笑みが浮かんでいる。
まるで、王子様という言葉が彼のために存在しているように輝いて見える。彼はおとぎ話からそのまま出てきてくれてロイドのことを助けてくれたのだろうか。ロイドはじっと見惚れている。
何も返事をせずにいたら、彼の視線が改めて大丈夫かと問いかけてきた。
「……あっ、はい」
もう少しまともな言葉を返せればよかったのに、とすぐに後悔した。おまけに声が裏返ってしまって恥ずかしい。
「よかった。安心したよ」
「あの、ありがとうございます」
ロイドは深く頭を下げてきちんと礼を伝えた。
すると彼は声を出して笑っていた。
「いいよいいよ。じゃ、気を付けてね」
ひらひらと手を振って彼は表通りに向かって歩いていく。
その姿を見つめていたロイドは、彼の歩くさまも王子様のようだと再び見惚れていた。
すると、数歩進んだところで、彼はロイドの方を振り返った。
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