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「歌、とってもよかったよ!」
どうやら今日店にいた客のようだった。しかし、彼のようにかっこいい存在であれば印象に残っているはずなのに。それほどまでに男の印象が深かったようだ。
彼の姿が完全に見えなくなると、ロイドの口から、はぁ、と溜め息が漏れた。
「かっこよかったなー……。あっ!」
ようやく出た言葉と同時に、ロイドは大切なことを忘れていたことに気付いた。王子様のような金髪の彼の名前を聞きそびれてしまった。だが、名前を聞いたところで再び店にやって来るかどうかは分からない。
「また来てくれるといいな……」
次に来てくれたときにに、改めて感謝を伝えたい。
ロイドはそう考えながら家へと帰っていった。
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