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 ふと、店の奥に一人でいる彼の方を見る。この曲でも彼は楽しんでくれたようで、相変わらず笑顔だった。ほっと安心していると、彼はロイドの方を見ていた。ロイドが気付いたその瞬間、胸がドキリとした。  まただ。彼を見るとどうしてドキドキするのだろう。彼はロイドにとって何か悪いものがあるのだろうか。本当に壊れてしまうのかと不安が押し寄せつつも、彼を一切見ないということはできそうになかった。 「ありがとー、ロイド!」  男の熱烈な感謝の言葉に、ロイドは意識を彼から男に向けた。手を振ってステージを下りながら男の方へと向かっていく。すでに男の周りには、仲のよい他の客が数人集まっていた。 「ちょっと、長い出張なんだって?」 「早く言ってくれればよかったのに」 「ごめんごめん。昨日急に決まってさ、まだ準備が終わってないけど頑張って来たんだ」 「それはお疲れさまです。戻ってきましたら、またここに来てくださいね」  ロイドは高揚感とは違うドキドキを忘れるために、必死になって会話に参加した。

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