19 / 110

19

 ようやく落ち着いてきたと思ったら、あっという間に閉店時間が近付いていた。ロイドは常連客たちとの会話にすっかり夢中になっていた。 「おっと、もう閉店か。今日は本当にありがと、ロイド。いっぱい話せて嬉しかったよ」 「こちらこそありがとうございました。お仕事頑張ってください!」  男を見送ったのが最後であった。店は一気に静かになった。  ふぅ、とロイドは少し気が抜けたところで店の奥のスタッフルームへと向かおうとした。 「あれっ……?」  よく見ると、カウンター席にはまだ金髪の彼が残っていた。しかしカウンターに突っ伏しており、眠ってしまっているようだ。ロイドは彼に近付いて声をかける。 「あのー、もう閉店ですよ」  普通に話しかけてみるが、聞こえている様子はなかった。 「起きてください、閉店ですよ」  今度は肩を揺らしながら声をかける。それでも彼が起きる気配はなかった。  きっと仕事で疲れているのかもしれない。そう考えるとこのまま寝かせておきたい気持ちになってくる。しかしここはロイドの店ではない。勝手なことはできない。 「どうしよう……」

ともだちにシェアしよう!