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「それは一体……」
「俺をしばらくここに置いてくれないか」
「えぇっ!?」
あまりにも突然すぎる内容に、ロイドは思わず大きな声を出してしまった。名前も知らない彼はどうしてそんなことを言ってくるのだろうか。
しかし、驚くロイドを前にしても、真剣な表情は一切崩れなかった。ふざけているわけではない。それでも、ロイドの中には疑問があった。
「……事情を教えてもらってもいいですか?」
「逃げてるやつがいるんだ。そいつの目をくらませるために、ここにいさせてくれ。……あ、犯罪とかそういう悪いのではなくてだな。ただここにいさせてくれるだけで十分だ。絶対に迷惑はかけない」
彼は再び頭を下げてきた。詳しい事情を教えてくれる気配はなさそうだ。
本当の悪人であればここまで必死になることはないと思うし、何よりロイドを助けてくれた恩人だ。そんな彼だからこそ、ロイドの答えは一つに決まっていた。
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