82 / 110

82

「あの、サリーさん……」  ロイドが呼びかけるのと同時に、サリーは一冊の本を持って再びロイドと向かい合った。 「よろしければこちらを。途中で嫌になりましたら読むのをやめても構いません」 「はぁ……」  今まで聞いたことのないサリーの言葉を不思議に思いつつも、ロイドは差し出された本を受け取った。 「応援してますよ、ロイドさん」  ニコリと笑っているサリーに、これ以上何かを問うことはできなかった。直接的に聞いても教えてくれる気はしない。  一礼してサリーの研究室を出ていったロイド。本にヒントがある理由も、サリーの言葉の意味も、何もかも分からないままアンディの研究室へと向かっていく。  気まずいとはいえ、日中は彼の研究室にある個室で過ごしているため、他に過ごす場所があるわけではない。

ともだちにシェアしよう!