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ノックをしてそっと中へ入っていくと、アンディは作業に夢中でロイドのことに気付いていなかった。音を立てないように気を付けながら、ロイドは個室へと入って椅子に座った。何もこそこそとする必要はないのに、ロイドはこそこそしなければならない気がした。
とりあえず本を読もうとロイドは本の表紙を見る。いつも借りている本と同じで、男女のイラストということは変わりないが、二人の距離がやけに近い気がする。まるで、先ほどのアンディとの距離を思わせる。一体何が違うのだろうかと思いつつも、ロイドは本を開いた。
ひたすら文字を追い続け、ぱらぱらとページをめくっていく。どんどん物語が進んでいくうちに、悲しいとは違う感覚がロイドの中にあった。
『私は彼のことが好きなのかもしれない。腕の中で包みこまれているこの感触が、あまりにも心地いい。
すると彼は、私の顎を掴んでくいとさせたかと思えば、どちらからともなくそっと唇を重ねた。』
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