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第8話 なんか変だ

 朝からスッキリしないのは俺にしては珍しい。でもここの所そんな日が続いていた。俺は桃李に指摘された体調の悪さが目に見えて出ているのかと心配になった。一度病院に行くべきだろうか。でも調子がイマイチなだけだ。それじゃあ、医者も判断に困るんじゃないか。  枕元の目覚ましを見て、二度寝を諦めて起き上がった。立った瞬間にふらふらして、俺は経験のないその事に少し恐怖さえ感じた。何か悪い病気とかじゃないよな…。  離れから渡り廊下を辿って母家のリビングへ行くと、珍しく父さんがコーヒーを飲んでいた。俺はトースターで食パンを二枚焼いている間に自分用にカフェオレを作ると、テーブルにコトリと置いた。 「おはよう、岳。…顔色が悪いな。どうした。風邪でもひいたか?」  俺はパンの焼ける匂いが鼻につくような気がして手で顔を押さえると、じっと俺を観察する父さんの顔を眉をしかめて見返した。 「…どうかな。でもこの匂い…。食べられないかも…。父さん一枚食べない?」  俺は立ち上がるとトースターからパンを重ねた皿に乗せ、ジャムとバターを冷蔵庫から取り出してテーブルに並べた。父さんの前に一枚乗せた皿を押しやると、自分の前にも一枚並べた。やっぱりどうにも食欲が湧かない。  目の前でどんどん父さんの口の中に消えていくパンを見るのも、何だか気持ち悪い。俺は食べるのを諦めて自分の皿も父さんに押しやるともう一枚食べてと言って、カフェオレを何とか流し込んだ。  物言いたげな父さんの視線を感じながら、俺は登校準備のために部屋に戻った。最近父さんと顔を合わせると今みたいな心配気な顔で俺を観察しているのを感じる。まるでこれから何か起きるんじゃないかと酷く不安に思っているかのようだ。  普段そっけない男同士の俺たちの親子関係を考えると、それは妙に引っかかる事だった。玄関を出る時も普段はリビングから声を掛けるだけだったのに、わざわざ玄関まで来てもう一度俺に尋ねた。 「…岳、具合悪いなら病院行くか?」  俺は、少し驚いて父さんを見返すと少し笑って言った。 「何、急に。そこまでじゃないから。もし怠くなったら保健室行くよ。行ってきます。」  そう答えるとガクバンを手に持って行ってきますと玄関を出た。ここは白路山の山の麓エリアなので市内の北山高校まではバスで20分掛かる。バス通りまで歩くと、俺はこちらへ向かってやって来る青いバスを見つめた。

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