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第32話 詰問
「それで?どういう事なのさ。」
俺の前で腕を組んでなぜか心持ちニヤつきながら、叶斗が俺がネックガードつけるに至った話を聞きたがっている。結局俺は逃げることも叶わず、先生が教室を出る瞬間にお迎えに入ってきた叶斗に捕まってしまった。
そして連行されたのは例の空き教室で。そして何故か高井も一緒に同行している。俺は相川が渡してくれたパーカーを着込んでフードを被っている。ちょっと視線が削がれたのか、注目はされてたみたいだけど酷い騒ぎにはならなくて済んだ。相川まじ神。
二人のアルファが詳しく話すまで、俺をこの部屋から出す気がないのを感じて、渋々話し出した。
「ここの所白路山の山駆けの修行しててもパッとしなくて、調子が悪かったんだ。そしたらあの日、バスで絶不調になっちゃって。そう高井に保健室まで運んで貰った時の日だよ。あれから直ぐに病院で検査入院になって、結果、俺はオメガに変異するって言われて。びっくりしたなんてものじゃなかったよ。
実際苦しくて死ぬかと思った。東京から専門医が来てくれて診てくれたんだけど、俺が山伏の修行で鍛えていたお陰で変異の症状も軽く済んだって言われた。でも、あれが軽いとかとんでもないけどね。
最初にコルセットしてたのはいきなりネックガードする勇気がなかったから。…以上。」
俺は真面目な顔で聞いていた叶斗と高井が黙り込んでいるのを眺めた。何を考えているのか不明だけど、俺腹が減った。弁当食べてもいいかな。
何も言わないので、俺は机の上に弁当を広げて食べ始めた。すると、叶斗がクスッと笑って俺の隣の席に来ると自分の弁当を置いた。高井も机を合わせてきて、やっぱり弁当を置いて食べ始めた。
「叶斗、お弁当珍しいな。」
俺がそう言うと、叶斗がため息をついて言った。
「だって、岳が買い弁しなくなったから。俺が買いに行ってる間に、こいつが割り込むだろ?だからお手伝いさんに頼んだ。岳ってさ、全然他人に執着ないからさ。そこが好きで一緒にいるんだけど、仲良くなってくると、ちょっとひどい気もしてくる。矛盾してるけどね。」
そう言って見栄えの良い弁当を広げた。
「岳のその、変異の話凄く珍しい症例だろう?俺も聞いた事がないけど。」
さっきから黙っていた高井が急に尋ねてきた。俺は箸を止めて、お茶を飲むと口をぬぐって言った。
「ああ、これって体質らしい。俺も知らなかったんだけど、俺の産みの母親がやっぱりβからΩへ変異したみたいで。しかも俺を産んだ後でだぜ?出産後にアルファと接点が出来てそのせいで変異が始まったらしい。
だから俺の変異が母親より早まったのは、もしかして叶斗や高井のせいかもな?」
俺の言葉に、なぜかその場の空気がズンと重くなった気がした。俺が違和感を感じて二人を見つめると、高井と叶斗がお互いを睨み合っていた。…え、何?どうしたの?
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