42 / 137

第42話 ハーレム?

 俺と高井が一緒にバスから降りて正門へ向かって歩いていると、門の側で待っていた叶斗が顔を上げて手を振った。お陰で前を歩く生徒達まで振り返って、俺と高井を目を丸くして見てきた。 「ガーク、おはよう。どう、大丈夫?痛みは?」  相変わらず騒々しさは一流の叶斗を睨んで、俺は口を尖らせた。 「ご心配どうも。ていうか、お前もうちょっと地味な存在になれないの?いちいち派手で、皆の関心を呼ぶんだけど。俺としたら、もう少し注目を浴びずに生きていきたいんだよ…。」  そう言う俺に、叶斗は首を傾げて言った。 「今更無理じゃない?だって朝から高井みたいな男と一緒に登校してたら。そうじゃなくても岳は時の人だからね。…それよりさ、俺ちょっと嫌な噂聞いちゃってさ。岳の話が結構広まってるみたいで。だから岳ももう少しオメガの自覚があると安心なんだよね。」  高井が急に話に割り込んで叶斗に尋ねた。 「それってもしかしてαネットか?」  叶斗は急に声を顰めて言った。 「そんな大きな拡散情報じゃないけど、地方版のそれ。変異Ω自体珍しいから、結構興味を引いちゃって、面白おかしく拡散されてるんだ。下手に情報投げちゃうと特定されるから、俺も眺めるしか出来なかったけどね。 でも岳も秘密にしてる訳じゃないし、そのうち特定されるのは時間の問題だと思うよ。高井はどう思う?αネットでも話題になると思う?」  俺を素通りして何やらやばい感じの話を続ける叶斗と高井に、俺は両手を上げて止めに入った。 「あのさ、結構ヤバめの話っぽいんだけど、ここでする話じゃなくない!?」  俺たちは周囲を見回した。何だか俺たちの周りだけ人口密度が高くなっている。急にそそくさと離れていく生徒達を眺めながら、高井が俺たちに言った。 「昼休みにあそこで話そう。」  教室に入ると、相変わらずの注目度だったけれど、俺はもう諦めた。席に着くと相川が後ろを振り返って俺にニヤリと笑って言った。 「おはよう、東。東に聞きたいことが有るんだけど。」  俺はこいつが聞いてくるのは碌な話じゃないとは思ったけれど、馬鹿が暴走するのも困るなと思って眉を顰めながら何だよと尋ねた。 「お前がαのハーレム作ったって聞いたんだけど、本当の所はどうなんだよ!」  俺は相川の周囲を気遣えない声のデカさと内容に頭を抱えて呻いた。ほんと、マジで勘弁してよ…。

ともだちにシェアしよう!