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★オメガの自覚★ 第41話 通学のバス

 相変わらずの注目を感じながら、今日もバスに乗って通学だ。しかし今日は身体の軋みが酷くて、ただ座っているだけなのになかなか辛い。  閉まりそうなドアから遅れて乗って来たのは高井だった。高井は車内をキョロキョロ見回すと、奥の方の俺を見てホッとした顔をして歩き寄って来た。 「おはよう、岳。身体の方は大丈夫か?」  俺たちの停留所は白露山の麓近くで、回送中継場所に近い停留所なので、バスに乗っているのはまだ数人だ。けれどこのバスは市内を突っ切るルートなので、北山高校や他の高校の生徒も少ないが乗っている。  そんな彼らが一様にギョッとした様な顔をして俺たちを見た。俺はなぜこうもいちいち反応されるのかと眉を顰めながら、隣に座った高井に答えた。 「お前いつもこのバスに乗ってた?もう少し遅い便じゃなかった?」  すると高井は俺に顔を寄せて言った。 「そりゃ、岳の元気な姿を確認したかったからな。あの時はどう考えても無茶苦茶だっただろ?まだ痛い?」  俺は肩をすくめて言った。 「…ちょっとだけ。なんて嘘。結構まだそっと動いてる。今日の体育は見学してるよ。」  そんな話をしていると、何だか周囲の人の顔が赤らんでいる。俺は怪訝に思って高井の顔を見上げた。すると高井はハッとして、それから妙にニンマリするといきなり俺の耳元に唇を寄せて囁いた。 「…それがいいよ。」  そんな色気満々の掠れ声で言う事だろうか。俺は耳を押さえてキッと高井を睨んで言った。 「ちょ、やめろって。」  ますます周囲の乗客が挙動不審で、俺は思わず大きな声を出した事を反省した。高井は妙にご機嫌で前を向いていたけど、俺はなぜ急に高井がご機嫌になったのか訳がわからなかったけど、もうどうでも良かった。  気がつけばバスの中は沢山の乗客が乗って来ていて、そこには北山高校の生徒も増えていた。知った顔を見つけると、顔だけで合図したけれど、俺と高井が並んで座っていると、皆必ず二度見して赤くなるのは何なんだ。  俺がオメガになってからと言うもの、こんな訳の分からない反応をされるのが何ともイラつく。俺のイライラに気づいたのか、高井がまた俺に顔を寄せて尋ねた。 「どうした、岳。痛むのか?」  俺はそうは言っても高井はずいぶん世話焼きだと、マジマジと見て笑って答えた。 「そりゃ、ずっと痛むけど。でもお前が心配するほどじゃないよ。あの時よりは全然マシだから。あれ、本当にヤバかったから。この程度で済んで良かったよ。」  だから、何で乗客がそんな顔を赤くするのか分かんないんだけど!?

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