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第40話 桃李の見舞い

 結局、その後も保冷剤で冷やして貰って、ついでに湿布を貼って貰った。叶斗と高井が誰が湿布を貼るかで揉めていたけど、俺がイライラしているのを見て慌てて一枚づつ交互に貼っていた。  あいつら湿布も貼ったことがないのかな。そんなに奪い合うほど楽しい作業だとは俺は思えないけど。貼り終えてから俺がTシャツを着る時も妙にじっと見てたし。もしかしてエロい目で見てたのか?  俺は自分の身体を思い浮かべたけれど、どこら辺がエロいのか全然分からなかった。気のせいだな、きっと。結局父さんが帰宅してから其々が帰って行ったけれど、その頃には俺は熱が出てきてベッドの住人になっていた。  次の日の日曜日も結局一日中ベッドに転がっていて、流石に何とか動けるようにはなった。時々光る着信は世話になった叶斗と高井には一回づつ返信しておいたけど、それ以外は放って置いた。  日曜日の夕方、俺の好物のアイス餅を持ってきた桃李と部屋で一緒に食べた。桃李は俺に昨日は大丈夫だったかと敢えて尋ねてきた。 「大丈夫かって?そうだな、俺はどうもΩとしての心得が足りないみたいだ。あいつら俺に裸で居るなとか煩くて。俺の裸見てムラムラするのか?桃李はどう?ムラムラする?あ、裸って言ってもアイシングしてた上半身だけだけどな。」  面白そうな顔で俺の話を聞いていた桃李は咳払いすると、真面目な顔で言った。 「俺はβだし、性的対象は女性だから、お前の裸見てもムラムラはしないけどね。αにとっては男女関係なくΩのお前は美味そうに見えるんだろ?どうもお前はもうちょっとΩとしての振る舞い方とか勉強した方が良いんじゃないかな。  こんなに身近に二人もαが居るんだ。何かあってからじゃ遅いだろ?高原先生に誰か紹介して貰ってΩレクチャー受けた方が良くないか?」  俺は桃李の言う事ももっともな気がしたけど、曖昧に頷いてベッドに横になった。 「何か面倒臭いな。俺自身はほとんど変わらないのに、色々気をつける事ばかり増えるんだ。どう考えても割に合わないよ。どうしてこんな体質なんだ。」  そうボヤくと、桃李が悪戯っぽい視線で俺に面白そうに言った。 「お前、忘れてないか?お前が前と完全に変わった点がひとつあるぞ。お前は赤ん坊が産めるようになったって事。それは凄い能力だろ?そうじゃないか?」  俺は桃李の言葉に頭が真っ白になった。考えもしなかったけれど、俺がΩになったと言うことはαに孕ませられるって事じゃないか。俺はその事実にゾッとして、桃李の言うように高原先生にΩレクチャーを手配してもらおうって決めたんだ。

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