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第39話 アルファに叱られる

 叶斗が嬉しそうに俺の口にピザを放り込む。俺は行儀の悪さはこの際棚上げして、打ち身のケアを優先した。ちょっと冷ましてくれているのか、吹き出さなくて済んでいるピザは美味い。食べ始めると結構腹が減っているのが分かる現象は何だろうな。  流石に10分も経つ前に冷たさに限界を感じて、跳ね起きた。背中から保冷剤がソファに落ちて拾い集めて軽く洗って、冷凍庫に仕舞う。後一回やった方が良いかもしれない。  取り敢えず寝転がっていたソファに座って、テーブルの上のピザに手を伸ばした。ん?何か叶斗と高井が物言いたげだ。俺はピザを一切れ皿に取ると、口元に持ってかぶりついた。 「叶斗の食べさせてくれたピザも美味かったけど、熱々を頬張って食べるのもやっぱり美味い。」  そう、ご機嫌で言うと、高井が困った顔をして言った。 「あのさ、上に何か着ないのか?」  俺は次のピザを皿に乗せながら答えた。 「あー、もう一回アイシングするし、その後湿布貼るから。いちいち脱いだり着たり面倒だろ?」  俺の言葉に叶斗が溜息をついて言った。 「岳はさ、自覚が足りないって思うんだけど。」  俺はピザを口の中に送りながら、叶斗を見た。 「俺が岳を好きだって言ってる側から、そうやって色気を振り撒いてさ。βだから、Ωだからって事はないけど、少なくとも俺には目に毒だから。」  そう言いながら、俺の上半身をねっとりと見つめた。あれ、これはヤバい感じ?動揺した俺が高井に救いを求めると、高井もまた俺をぎらつく眼差しで見ていた。俺は急にゾクゾクしてカッと身体が熱くなった気がした。 「ちょっ!岳不味いって!」  そう言いながら、叶斗が慌てて窓を開けに行った。高井もリビングの仕切り扉を開けに立っていた。あー、もしかして俺臭気の元になった感じ?ゾクゾクしたのは一瞬だったけれど、俺は立ち上がると瓶に入った抑制剤を飲んだ。 「臭かった?悪い。薬飲むタイミング遅れたのかも。俺、そっちのテーブルで食べるよ。近くに居ない方が良いだろ?」  リビングに突っ立った二人が顔を見合わせて、声を揃えて言った。 「「だから服着ろって!」よ!」  俺はオメガって面倒くさいなぁとおもいながら、渋々ダイニングチェアに掛けておいたTシャツを着た。どうせまた脱ぐのに…。そんな俺に叶斗が俺をじっと見つめて何か呟いたけれど俺には聞こえなかった。 『それに、岳の匂いは臭いんじゃなくて、良い匂い過ぎて俺たちがクラクラしてヤバいんだよ…。』

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