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第38話 オメガとアルファ
俺がアルファに気を許すべきじゃないって言うと、叶斗が俺の前に膝立ちになって懇願して来た。
「それは違うよ、岳。アルファとオメガは惹かれあって当然だ。ただ、どちらも一方的なのがダメなだけで…。だから俺はオメガかどうかは置いておいても岳が好きだけど、岳の嫌がることは絶対にしないし、オメガだからって無理やり襲うなんて事するわけない。そんな事をして嫌われる勇気なんて正直無いよ。」
俺はいつもチャラついてる叶斗がこんなに真摯に気持ちをぶつけて来ることにも驚いたし、いきなり告白された事にも戸惑った。
「叶斗、俺の事好きなの…?」
すると叶斗は呆れた様に俺の両手を握りながら言った。
「…毎日一緒にお昼食べて、岳に抱きついて来た俺のアピールは何の効き目も無かったって事?いや、俺お前のこと好きだって結構言ってたよね?」
俺は首を傾げて考え込みながら呟いた。
「…お前は言葉が軽過ぎて、普通そこに意味なんて無いように思うだろ?」
叶斗は酷いと泣き真似をしながら、ちゃっかり俺の腰に手を回して抱き着いて来たけど、そう言うとこだぞ?俺に協力して高井も叶斗を引き剥がすのに協力してくれたけれど、そう言えば高井もどうして付き添ってくれているんだろうか。
何も言ってこない高井に敢えて地雷を掘り起こす事もないと思った俺は、自分の手足が思いの外汚れているのに気がついた。二人に風呂に入る事を告げると、そろそろデリバリーも来るからと、三人でリビングダイニングへと向かった。
二人に食事の事を任せると、俺は一人浴室へ向かった。痛む身体でぎこちなく髪と身体を洗いながらシャワーだけで済ませた。下手に湯船で身体を温めたら痛みが強くなりそうだった。
俺は鏡の前に立って身体の打ち身具合をチェックしながら、顔を顰めた。想像以上に酷い。肩や背中、腰の上身体の裏側が打ち身だ。俺は持ってきた下着とジャージを履くと、上半身裸でリビングへ向かった。
高井が俺を見て何故か目を見張ったけれど、冷凍庫を漁る俺を見て息を呑んで言った。
「おい、酷いな…。」
俺は保冷剤を高井に幾つか渡すと、身体の上に載せてもらえるように頼んだ。丁度その時、叶斗が玄関からピザの箱を手に戻って来た。やっぱりギョッした顔で俺を見つめると、ソファに寝転がる俺の背中を見て叫んだ。
「え!悲惨じゃん!どうしたら良い?おれも何か手伝う?」
俺は背中に保冷剤を載せられた冷たさで顔を顰めながら叶斗に言った。
「じゃあ、ピザアーンして。」
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