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★変異オメガ★ 第78話 噂

 「どうだった?」  いつもの昼休み、いつもの空き教室で、叶斗は新に言葉を投げかけた。新は俺をチラッと見ると、少し眉を顰めて叶斗に答えた。 「それとなく探りを入れたんだ。地方に変異Ωが出現したって話は、東京じゃ都市伝説扱いになってて、下手に地方のこちらから話を振るのも、勘繰られるからな。それだけ、珍しいレア案件だって事だ。  ただ、岳の主治医の先生、あの先生の研究が発表されると、痛い腹を探られる事になる可能性がある。ほら変異Ωは家系的なものが原因てやつ。岳の母親の事が明らかになると、芋づる式に岳が掘り起こされるだろう?」  俺は肩をすくめて言った。 「俺には何でアルファたちがそこまで変異Ωに関心を寄せるのか、その理由が分かんないけどね。だってどう考えても生粋のΩの方が綺麗で、庇護欲が湧く相手だろ?何もこんな中途半端な変異Ωに、関心を寄せなくても良くない?」  すると叶斗が俺をグイっと引き寄せて耳元で囁いた。 「あれ?岳は俺たちが、物珍しいから岳を可愛がってるとか思ってたの?はぁ、これだから秘密にしないといけないんだよ。本人の自覚がこのレベルじゃ、今度の東京詣も先行き不安だし。やっぱり行くのやめようか…。」  俺はそもそも地元の国立大志望だったけれど、新から東京の話を聞いているうちに、新天地で新生活を楽しむのも悪くない気がしてきていた。東京にも、山駆けに向いていそうな場所は探せばありそうだったし。  父さんにその話をした時も、好きなようにして良いとか全然俺任せで、それはそれで何とも言えない気がした。もっとも、父さんにとっては、俺がΩになった事はどうもピンと来てない気がする。まぁ、βだからな、よく分からないと言うのが本当だろう。  そうぼんやり考え込んでいた俺に、新が真面目な顔で言った。 「岳、αってのはレアものを欲しがるものなんだ。俺たちは元々岳自身を知ってから、Ω化を目の当たりにしただろう?でも特に東京に居るような上位アルファたちは、物珍しさから岳に近づいてくるのは間違いない。実際、岳って説明し辛い引き寄せが発動してるんだよ。これがなぁ…。」  そう言って眉を顰めて俺を見た。俺は何か馬鹿にされてるような気がして、口を尖らせて噛み付いた。 「何だよ!はっきり言えよ。どうせ、碌な事じゃないんだろうけど!」  すると、いつの間にか俺を抱き締めていた叶斗が、妙に甘ったるい声で言った。 「ふふ。岳って本当可愛い。こうやってアルファに全然頓着なく食らいついてくるところ。それこそ、変異Ω、岳の凄まじいセールスポイントなの、本人が自覚ないのが罪だよね?…まったく食べちゃいたいよ。」

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