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第88話 灰原さんの正体
相変わらずのお昼休み、俺たちは空き教室でいつもの様にだべっていた。灰原さんの事はコイツらにバレなくてホッとした。色々とめんどくさい事になる気がしたからだ。
「この前の説明会で、岳は希望の大学の目星をつけたのか?」
そう新に聞かれて、俺は首を傾げた。
「そうだな…。一応私大で有名どころなら、Ω対応はそう変わらなかった感じだったよ。全然無いわけじゃないけど、やっぱりおざなりな大学は、Ωとしても初心者の俺にはちょっと困るかなと思って。それに俺、発情期も来てないだろ?」
そう言うと、二人ともピクリと緊張が走った。何でか知らないけど、俺の発情期の話になると、いつもこんな感じだ。俺は思い切って二人に尋ねた。
「なぁ、発情期の話すると、どうしてそうやって反応する訳?」
すると、二人はお互いの顔を見合わせると、叶斗が咳払いして俺に言った。
「…岳の場合はさ、目を離すと、全然知らないアルファにいきなり取り込まれてる危なっかしいところがあるからさ。俺たちも気が気じゃない訳。Ωの発情期は本人も訳わかんないけど、側にいるアルファもヤバいから。抑制剤は効くと思うけど…。
岳の発情期は、強さとかも未知数だから。」
俺は腕を組んで、病院で教えてもらった事を思い出しながら叶斗の話を聞いていたけど、いきなり核心を突かれて内心ビクビクだった。でも灰原さんは上手くかわしたはずだ…。そんな俺の前で二人が、何とも俺の顔色が悪くなる様な事を話し出した。
「新、アルファと言えば先日のOB説明会、仕切ってたのグレイ企画だって知ってたか?もしかしてあの人も来てたのかな。お前見かけた?」
そう叶斗が尋ねると、新は首を振って答えた。
「いや、見かけてないけど。あの人あちこちの雑誌に出てるだろ?だから会えばすぐに分かると思うから、来てなかったんじゃない?」
俺は恐る恐る二人に尋ねた。
「一体誰の話?」
新はにっこり笑って言った。
「ああ、悪い。アルファの中じゃ結構有名な人なんだ。まだ学生の頃からベンチャー立ち上げて、今やすっかり有名な企画会社になってる。灰原 誠って言うんだけど、聞いたことない?」
俺はドキッとしながら、俺はそんな有名人を締め上げたのかと動揺しながら、首を傾げて言った。
「…灰原?聞いたことないけど。」
そう言うと、叶斗は俺を引き寄せて言った。
「風雲児、灰原さんに会えなかったのは残念だけど、今度東京行くって言ったじゃん?新の拠点もある事だし、今度の連休使って行こうよ、東京。な?がーく。」
すると呆れた声で新が言った。
「一応大学見学な?遊びじゃないぞ、叶斗。岳は大丈夫そう?」
何か二人の視線が熱い気がして、ドギマギしながら小さい声で言った。
「…大丈夫だけど。でも、何か悪い予感がするんだけど、気のせいかな。」
すると叶斗が俺の耳元に唇を寄せて、甘く囁いた。
「…もう、岳はえっちだなぁ。そんなに期待されたら、俺頑張っちゃうからね?」
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