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第93話 実験しますか
灰原さんが余計な事をペラペラ喋って、一人クスクスと笑った。俺はすっかり二人に内緒にしてたあれこれがバレて青褪めた。けれども何だか二人の様子が変だ。さっきまでの重い空気はそのままに、でもいつものあの自信満々な感じがなかった。
俺はどうしたのだろうと二人を眺めると、少し青ざめた顔で叶斗が息を吐き出した。
「灰原さんひどいですよ。そんなにフェロモンの圧かけてくるなんて。でも、岳は俺たちものですからね。簡単に灰原さんの好きにさせませんから。」
俺は、灰原さんに好きにされそうになってるのかとびっくりして、目を見開いた。
「何言ってんの?俺がなんで灰原さんの好きにされるんだよ。そんな事あるわけないじゃん。」
そう言うと、灰原さんは弾けたように笑って言った。
「いいね、彼最高だよ。ほんとに私は今までΩにこんな対応されたことないんだけど。しかもなんか彼効かないよね、私のフェロモン。がっつりマーキングされてるせいかなぁ。それとも変異Ωのせいなのかねぇ。桂木先生、丁度良いから、そこら辺をちょっと調べたほうがいいんじゃないですか?」
そう余計なことを言ってくれちゃって、ますます隣の二人がピリついてしまった。桂木先生は肩をすくめて言った。
「誠くん、あんまり二人を刺激しないで。岳君も、Ωになったばっかりで、色々慣れないんだからね。お手柔らかに。とは言え、確かに誠くんの強いαのフェロモンが効いてない感じがするね。…岳君、今、身体の調子どうかな?」
「俺ですか、特になんて事ないです。ちょっと肌がピリピリするかな。」
そう言うと灰原さんは、すっと近寄って来て言った。
「そうかぁ。じゃあ触ったらどうかな。」
すると新と叶斗が僕を囲う様に、灰原さんから遠ざけた。そして新が灰原さんを睨んで言った。
「それはルール違反でしょう?いくらグレイ企画の灰原さんだとしても、やって良い事と、悪い事があるでしょう。」
俺は、桂木先生の研究者としての眼差しを感じて、二人の護衛を止めて言った。
「二人ともありがとう。でもほら、俺はある意味、桂木先生の研究対象だからさ、少しは協力しないと。ちょっと触られるくらい大丈夫でしょ。」
すると桂木先生は、ちらっと周囲を見回した。釣られて見ると、興味津々でこっちの状況を見守っている人たちが大勢いたんだ。全然気がつかなかったよ。
「ここじゃアレだから、場所を変えましょうか。僕の研究室で、血液検査と、ちょっとした実験をしましょう。特に岳くんがここで、発情か何かしたら大変ですからね。」
俺は目を見開いた。そんな怖い実験なの?俺、ちょっと早まったかもしんない…。俺は思わず二人の顰めっ面を見つめて苦笑いするしかなかった。
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