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第97話 お仕置き前のお小言※

 黒と茶色のシックな浴室に連れ込まれた俺は、二人にあっという間に身包み剥がされていた。抵抗はしなかった。それはしない方が良いと踏んだからだ。  さっきのタクシーのあの疼きは食事をしたせいか、少し収まっていた。あれが発情では無いとすると、Ωの発情期がどんな酷い事になるのかと思うとゾッとしてしまう。 「岳、俺たちにちゃんと話さないから、こう言う事になるんじゃ無いの?ちょっと今日は、穏やかな俺も我慢の限界だったよ。どうして灰原さんと知り合ったって言わなかったのさ。」  そう言いながら、俺の胸を泡のついた指でヌルヌルと擦り上げる叶斗に、俺は呻きながら答えた。 「だって、お前たち大騒ぎするだろ?んっ。別に知り合ったってほどじゃなかったし。嫌なアルファだと思って、お前たちのいる方へ行こうとしたら俺の腕を掴んだんだ。ムカついて、背中に腕捻ってやった。」  事実を聞いたら絶対許してくれると踏んでいた俺は、見通しが甘かったみたいだ。俺の頭を洗っていた新が、手を止めて尋ねた。 「え?岳が灰原さんを締め上げたのか?」  俺は少し得意になって話し続けた。その時叶斗の手も止まっている事に、俺は気づかなくてはいけなかった。 「まぁね。俺は腐っても山伏だからさ、身体が勝手に動いちゃうっていうか。まぁ面倒臭い奴に絡まれたな、なんて思ったせいもあって、ついやり過ぎちゃったかも。はは。」  俺が機嫌良く話していると、二人がため息をついて、俺の身体を馬鹿みたいに洗い出した。俺は泡にまみれながら、なぜか二人が俺の頑張りを評価していない気がして尋ねた。 「なあ、俺ちゃんと灰原さんのこと、そう、袖にしただろ?これで正解だと思うんだけど。二人が怒ってるの意味わかんない。」  すると新は俺を抱え上げて、叶斗に後ろを綺麗にさせながら、ビクビクしながらしがみつく俺にため息をつきながら言った。 「岳はαの事知らな過ぎだ。アルファってのは、幼い頃からほとんど挫折も知らないし、自分の思う通りに人生を送ってきている奴がほとんどなんだ。なのに、自分より弱いΩに痛めつけられるとか、絶対興味持つだろ?  俺たちだって、思い通りにならない岳に振り回されるのを楽しんでる部分はあるからな。岳が自分らしく生きれば生きるほど、何だかアルファ達を引き寄せそうで俺は心配だよ。」  そう言って俺を甘やかに見つめた。俺はもうすっかり出来上がってきていて、新の唇を見つめながら呟いた。 「もう、お小言は良いよ。…俺に甘いものくれよ。」

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