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                 僕の体内に入ったバイブを――()()()ともに楽しんでいた。  そう指摘してきた目の前の男性は、やはり冷ややかな真顔である。   「…いいえ…、僕一人でこの変態趣味を楽しんでいました。僕一人で、勝手に…」   「…そうですか。しかし、それはありえません。」    すると、きっぱりと僕の否定を遮り、断言した男性は――スラスラと自分の推理を、まるで名探偵が犯人の罪を暴くかのように堂々と続ける。   「…ではなぜ、私が訪れてすぐ、たった何秒かでバイブのスイッチが切れたのですか」   「……え…?」   「…ユンファさんはその実、下半身にはきちんと何か…おそらくチノパンのようなものを穿いてらっしゃいますし、また、多分下着もきちんと身に着けた上で、そのバイブを膣内に挿入してらっしゃるじゃないですか。…」   「……、…」    おそらくはまた()()()()()ばかりで、この男性はその推測を立てたのだろうとは思うのだが。――いや、()()とはいっても、正直そのとおりなのだ。  僕は()()下着も穿いているし、その上から黒いチノパンも穿いている。――そして、その上でナカにバイブを挿入しているのだ。   「…まして、そのチノパンにはベルトも通っている。バックル付きの革だ。…しかもその上から、腰に巻くタイプの、エプロンのようなものを着けている。それの腰紐も、キツく結んでらっしゃいますね。」   「……、…」    そう、そしてまたその通り――僕はチノパンの上から、焦げ茶色のベルトを着けている。…以前より痩せてしまったので、ベルトがないとチノパンが落ちてきてしまうためだ。  そして腰巻きスタイルの黒いエプロンにしてもそうだ。キツめに腰の裏で締めないと、落ちてきてしまう。   「…つまり貴方の腰回りは、そのベルトやエプロンによって締め付けられているはずですから…――であれば咄嗟に、チノパンや下着の中に手を突っ込んでバイブのスイッチを切るだなんて、まずその状態ではできないはずなのです。…」   「…………」    僕は何も言えなかった。――ただぼんやりとまばたきをして、彼の怜悧そうに動く血色の良い唇を見ていた。  この男性にはもはや、嘘も言い訳も通用しないのだ。…むしろ今の僕は、これまでについてしまった下手くそな嘘たちを恥じるようですらある。    そして目の前の男性は、いよいよ僕へ()()()を刺すように、どっしりと落ち着きのある、低い声で。   「…つまり…ユンファさんの膣内にあるのは、遠隔バイブに違いありません。――そして貴方は、そのバイブのスイッチを持っていない。…」   「…………」   「…カッターシャツの胸ポケットにも、チノパンのポケットの中にも、また、その腰に巻いているエプロンのポケットにも…そうした硬い、塊状の物の音はしませんでした。」              

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