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               僕は心の中でそう言ったのだろうか。  それほどに自然と、胸の底からごめんなさい、と懺悔し――助けてください、と祈った。    いや…僕はたしかに、声に出してそう言ったのだ。  小さくとも、かすれていようとも、僕は確かに声に出してそう言ったのだ。    だからこそ…僕を抱き留めているソンジュさんが、僕の耳元でククク、と喉を楽しげに鳴らして笑ったのだ。――そして彼は、とたんに若々しく、少し上ずった声で。   「…っもちろんですよ…、もちろんです、ユンファさん…? ええぜひ。…謹んで、私が貴方を助けて差し上げましょう…――?」   「………、…」    助け…――僕は頭がぼーっとしている。  正直、まだこの展開にはまるで、ついていけていない。    あまりにも急な展開で、ある意味ではこの状況もまた、僕にとっては青天の霹靂なのである――。    するりと離れたソンジュさんは――目を瞑っていた。   「…ユンファさん。…」    僕の名前を、何か意志のこもった硬い声で呼びながら、す…とその目を開けたソンジュさんは、――切れ長の、やや垂れた目尻のその、淡い水色の瞳で…僕を見ている。    そして彼は、僕の顔を真剣な目で見つめ、――いや、何かを見定めようというその真剣な眼差しで、僕の目の中を覗き込んでくる。   「…ただし、私はその前に、貴方に()()()()()()()()()()があります。…貴方にお聞きしておきたいことが、実はもう三つだけあるのですよ…――。」   「……はい…、…」      なんだろう、と僕は――とたんに気を張り詰めた。               つづく

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