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【4】「やっと見つけた」

          “「…私はその前に、貴方に確かめておきたいことがあります。…貴方にお聞きしておきたいことが、もう三つだけあるのですよ…――。」”    神妙にそう切り出してきたソンジュさんは、また椅子にすっと腰掛けると――僕を尋問するかのような冷ややかな真顔で、僕の横顔をじっと見つめてくる。   「…………」    僕はその鋭い目線に、とたんに冷や汗をかくほど緊張して、椅子に縮こまって座っている。――よほど重要な質問をされるのだろう、と、…正直、上手く答えられる自信はまったくない。…何を聞かれるのかもわからないが。    いや、別に助けてくださるというのを本気にはしていない…――と、言いたいところではあるが。…事実、僕はもう高級オメガ専門風俗店『DONKEY』を、どうやらすでに辞めているらしいのだ(ある意味ではソンジュさんの勝手で)。    となると…そこまできたら、と――欲張ってしまうのだ。  どうせ性奴隷である。――どうせ、何もかも諦めているような僕である。  正直いうと、両親のことがどうにかなるのなら、僕は死んだっていい。――これ以上の地獄があるとしても、もう今更だ。…今更自分の身をどうしようとも思っていない。    とにかく、僕には何をしても構わないし、僕なんかどうなったってもはや構わないから、家族のことだけはなんとしても頼みたいところだ。    進むも地獄…――此処に留まるも地獄。    そうならば僕は――この展開を、あるいはチャンスと捉えてみようかとも思う。   「…では、ユンファさん。――お尋ねしますが…」   「…はい…」    おもむろに、重たそうな調子で口を開いたソンジュさんは――慎重に、僕へとこう尋ねてきた。       「…ユンファさんは…ベータ属について、いったい…どう思われますか。」         

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