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――すんすんすんすん
「…………」
「…んゥ、♡ クふッ…〜〜ッ♡」
おい、おいちょっと、…勘違いじゃなかった。――もはや遠慮なく僕の耳に鼻先をくっつけ、犬(いや狼か)のようにすんすんそこの匂いを嗅いでくるソンジュさんの、その鼻息がふうふうかかる、…僕の感じやすい耳に。それにビクビクしてしまった僕は、今にも声が出てしまいそうだと、喉を強ばらせる。
「……んん……、あぁ、なんて良い匂いだ…」
「…ッ!♡ や、…そ、ソンジュさん…、…」
耳の穴のすぐ近くで低く、しっとりとそう言われると、――やめてほしいと、僕はソンジュさんの名前を呼んだが。……彼はすん、すんすんと、意に介さず僕の耳を嗅ぎ、ふぅ…と僕の粟立った頬に吐息をかけては、――耳の裏に鼻先を寄せてくっつけ、くんくんくん。
「…ふ…ッ♡ ッふく…〜〜ッ♡」
も、やめて、――いや、この人がやめるわけない。
ならもうは、早く降りてくれよ…――乗ってきた人、頼むから、…これ、ヤバい。…露出調教なんてさすがに経験はないんだが(ケグリ氏に「リード着けてお散歩するか?」と脅されたことはあるが)、…これは、多分それと同じような恥ずかしさである。
顔が熱い。眉が寄る。――感じそうになる。
「…ふふ、ユンファさんは、甘い桃の匂いがしますね…」
「…ゥふ、♡ …〜〜〜ッ♡」
やめ、耳元で低く囁かないでくれ、――何考えて、いやそっか、…彼、好奇心がそもそも人より強い人なのだ。
先ほども僕が、ソンジュさんが(僕の匂いを嗅ぐのを)やめるわけないと思ったゆえんはこうだ。
好奇心が強いソンジュさんは、僕のオメガ属特有の体臭が気になったのだろう。ということである。――いや、そりゃあフルーツやら花やらの匂いがする僕らの体臭は。他の種族からしてみれば物珍しいものらしいので、その実ソンジュさんのみならず僕の体臭を嗅いで喜ぶ人は多くいる。…なんなら僕の甘い肌を珍しがって舐めたがる人も多かったし、――まあ、時と場合を考えずに好奇心のまま突っ走るのはこのソンジュさんくらいだろうが。
追求したいとなるとどこまでも追求する…まるで獲物を追う狼のように。――いや、もしかするとソンジュさんのこういうところは、ア ル フ ァ な ら で は の 習 性 とも呼べるものなのかもしれないか。
すると、ゴクリ…――僕の耳元でソンジュさんが喉を鳴らした。
「…凄く美味しそうですね、ユンファさん……」
「……、…、…」
いや、僕、もしかして、食われる――。
じゅるりとヨダレを啜る音が聞こえたような…隠 喩 の 意 味 のほうではなく、シンプルにむしゃむしゃ肉を貪り食われそうだ。
いやそれは、さすがに勘弁してほしい――。
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