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僕は目を瞑り――憩い、微睡むと――猛烈なスピードで浮かぶ恥辱の映像にまぶたを開け――ソンジュさんに縋り、何度も彼の体を強く掴んだ。…その腕を、彼の背の布を、その人の襟元を――僕の心臓は、ドクドクと激しく速く波打った。…眠ることすらできない今が苦しく、いっそこの心臓が止まれば、いっそ僕の脳が死ねば、いっそ僕が死ねば…楽になれる、――そんな気がすると、ソンジュさんは僕の汗が浮かぶ頬を優しく撫で、切ない眼差しで僕を見る。
ソンジュさんは僕に、微睡むような優しいキスをしてくれる。僕のまぶたに、唇に、首筋に、髪に、手の指先に、優しくちゅ…と口付けてくれる。――ソンジュさんは僕に寄り添い、僕の震える体を、髪を、優しく撫でてくれる。何度だって僕を抱き締めてくれる。――ソンジュさんは僕に、何度も言う。「大丈夫、俺がユンファさんを守ってあげる。大丈夫だよ、俺が側にいるよ…」――神様だ。
ソンジュさんは本当に――僕にとっての神様だ。
何度も、何度も、何度も、それを繰り返した。
そのたびにソンジュさんは、少しも嫌な顔をせず、また少しも面倒そうにしないで、僕のことを何度もなだめて抱き締めてくれた。――優しく語りかけるその美しい声…、優しく僕の気持ちを落ち着かせるその唇…、優しく微睡みへと誘うその指…、大きな体は僕の全身を包み込み、何度も僕を安心させてくださった。
そうして、気が付いたら僕は…――安心して、眠っていた。……このまま、僕の息が止まってしまえばいいのに。このまま、眠ったまま…僕は息絶え、すっとそのまま死んでしまいたい。
この甘くて幸せな夢が――覚めませんように。
「………、…?」
そして、次にゆっくりとまぶたを持ち上げたとき――僕は、仰向けになっていた。…僕の腹の上に、ソンジュさんが馬乗りになっている。――僕の両腕は上がり、僕の両手首は、…ベッドヘッドに固定されている。
脚も開かれたまま、動かせない。――足首を何かで固定され、動かそうとすると、チャリ、ガチャ、と金属音が聞こえる。――鎖に繋がれている。
「……、あぁ、起きてしまったんだね、ユンファさん…、眠っている間に、済ませてあげようかと思ったのに……」
「……え…?」
何を…――?
ソンジュさんは冷ややかな目で僕を見下ろし、ふ、とその朱色に艶めく唇の端を妖艶に上げた。…そしてやけにあどけない口調で「まあいっか、逆によかったかな…」と呟いた。
彼は、おもむろに前へ倒れてくる。――ギイ、とベッドのスプリングが鳴る。…僕の耳元へ、その濡れた唇を寄せてきたソンジュさんは…ふふ…と小さく笑い、僕にこう、ささやき声で確認を取ってくる。
「…短時間で外すつもりではありますが…――手枷と…足枷、つけさせていただきました……」
「……ぁ、は……はい、お、お好きに、なさってください…」
思わず怯え、声が震える…――僕は性奴隷として犯される、…お仕置きされるのだろうか、
「………、…」
僕はまさか抵抗などせず、力なく目線を伏せ、ただぼんやりとしている。――やっぱり、やっぱり嘘だ、ソンジュさんの優しさも、…嘘だったんだ、
「…んふふ…、随分、従順なんだな…――そんなユンファさんも、本当にお綺麗だ…、ですが、ユンファさん…? 少し、貴方には残 酷 な こ と をするかもしれません…、構いませんね…」
「……はい…もちろんです、僕のことはどうぞ、お好きになさってください……」
ソンジュさんは確認したが、僕は性奴隷として、もはや思考せずとも言えるようになったセリフを口にし、頷いた。…少しでも酷い責めを受けないように、祈りながら、失意に呑まれながらも――ぼんやりと、ゆっくりと…彼に身を任せる。
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