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                 浴槽のヘリに座らされ、背にした壁を支えにしている僕…ずちゅずちゅと僕のナカを行き来するソンジュさんは余裕たっぷりに、僕の歪んだ顔をじっくりと眺めている。   「可愛いね、ユンファ…本当に可愛いよ、綺麗だ…」   「…ひっ…♡ クっふ…♡ もうらめ、もういきたくな、…ァ…――ッ♡♡♡」    体力が凄い…――もう僕のほうは疲れすぎて、イかされすぎて、頭もどろどろ、舌ももつれる。…イくときにはもう、完全に息が止まってしまう。  めちゃくちゃで泣いているというのもあるが、声ももうほとんどまともに出ない。一言一言が、ひゅっと引き攣れて上ずった、あわや甘ったれているような、弱々しい声しか出ないのだ。――何なら喘ぐのも疲れてきた。   「あぁ可愛い…可愛いなぁ、泣いちゃったね、ふふ…」   「…うっクぅ…んっ♡ んん…♡ ……ッ♡ …、♡」    ソンジュさんは、暗い笑みを浮かべて僕の両頬を挟み込み、ジーーーっとその翳った水色で見つめてきたと思ったら――僕の唇を塞いで、めちゃくちゃに舐め回し、唇でも蹂躙してくる。  疑っていた僕のほうが馬鹿だったらしい。  そんな気さえするのだ。――ソンジュさんの愛、思っていたよりもかなり重たい。……さんざんしつこくイかされた今だからこそそう思うのかもしれない、冷静じゃないから、かもわからないのだが。   「…ん…っ♡ ン…ッ♡ んん…ッ♡ んぅ…♡」    ちなみに僕は、もういま自分がイっているのかイっていないのかも判断がついていない…――ずっとイっているような気さえして、…すごい……しあわせ…♡♡♡   「…っは…可愛いすぎ、俺のユンファ…? どこに出してほしい…?」   「……へ…?♡ んぅ…♡ …っは…――はぁ…♡ ナカぁ…♡♡」    僕は絶対に中出ししてほしい、と本能で思い、ソンジュさんのうなじにしがみついた。――脚でも彼の腰の裏にしがみつき、「一番奥…」と、ソンジュさんに甘えた。   「…はは…、ユンファさん…俺の赤ちゃん、妊娠してくれるの…?」   「ん…っんん…♡ ん…? うん…♡」    赤ちゃん…――赤ちゃん…、赤ちゃん…?  妊娠…しないと。――僕、妊娠しないと、…アルファの子供、妊娠しないと。   「…孕ませてください…、…妊娠…したいです……」   「……、…はぁ…、…」    ソンジュさんは思いため息をつくと、僕を強く、痛いほどに抱き締めては――僕の耳元で。   「…ユンファ、俺のユンファ…、どこにも行かないで」   「……ハ…ッあ、…そ、んジュさん、…っ」    ソンジュさんの、その悲しげな声にハッとした僕は、…途端に込み上げてきた恐怖で全身がガタガタ震え始め、その人の体に手脚を絡めてしがみつく。   「…ソンジュ…っソンジュ、愛してるソンジュ、大好き、…」   「……ッ、…ユンファさ…」   「…貴方が好き、貴方だけが好き、貴方が好きソンジュ、…僕、…僕は……」    確かめたのだ。  今を、このときを――ケグリ氏がいない。  ケグリ氏はおらず、僕を抱いているのはケグリ氏ではなく、また、ノダガワの人々などでもなく――いま僕を抱いてくれているのが、…大好きな、ソンジュさんだと。    僕は自分で、確かめたのだ。自分で自分に言い聞かせたのだ。   「……貴方だけ…、ソンジュだけだ…、僕はもう、全部ソンジュだけのものだ……」   「…もちろんだよユンファ…、愛してる、大好きだよユンファ、ユンファのことが一番大好きだ、俺は…」    ソンジュさんは僕の体を抱きすくめながら、浅く動き始めた。   「…っあ、♡ は…っ♡ ん、ん、♡ …っすき……、…っ貴方が好き、!」    僕は泣きながら、ソンジュさんにしがみついた。   「ナカ出していいの、…やめとく、? は、…」   「…んっうぅ…♡ ぅ、おねが…ソンジュ、…出して、…」    首を横に振る僕は、祈るような気持ちで、ソンジュさんの体にしがみついている手脚に、力を込めた。   「…お願い出して、い、いっぱい、…いっぱいナカに出してソンジュ、好き、愛してる、…大好き、好き…っ」   「…ん、…ぁ…出る、…っふ、……――ッ」    するとややあって、…ぐうっと子宮が持ち上げられた――いや、子宮口に強く押し付けられたソンジュさん自分の先端に、…僕はより強く彼にしがみつく。   「……っん、♡ ぁ…♡ ぁ……」    ナカに…熱い精液がビシャビシャ出ている。  敏感な子宮口に、信じられないくらいの量がたっぷりかかっている。――いくら溜めていたとしても、およそ普通の量じゃない。きもちいい…しあわせ…泣いてしまう。   「…っはぁ……はぁ、は…、…いや、今日のために一週間くらい溜めていたから……」   「……っ、……ぁ…」    ――そうだった。  まだ出ているのだ。…ソンジュさんはもうすっかり射精を終えました、というスッキリした男の顔をしてはいるが。――カナイさんである彼もまた、こう言っていた。   「…まあ、じゃなくても…アルファの射精は、多くて長いんですけどね…ふふ、ありがとう、きもちよかった…」   「……、は…、…はぁ…は……」    どんどん僕の子宮に、ソンジュさんの精液が溜まってゆく。というかオメガ属の子宮は、ごくごく精液を飲んでしまうのだ。――まだ出てる…しあわせ…――そう…いわく、アルファ男性の射精は、五分以上がデフォルトなんだそうである。   「…はぁ…、は……っ、…っ、…~~っ」    僕は感情がめちゃくちゃになってしゃくりあげ、嗚咽する。――すると、ソンジュさんも泣きそうな笑顔を浮かべ。   「…大好きだ、ユンファ…、愛してる…大丈夫、大丈夫だよ…、…」   「……は、ん…、…んぅ…」    僕と指を絡めて片手を繋いだソンジュさんは、射精をしながら、僕の口の端をペロペロと犬のように舐め、その流れでキスをしてきた。…僕は彼のうなじに片腕を回し、熱く満ちて重たくなってゆく子宮を感じながら、胸にも満ちる幸せに、彼の唇を食み返した。      ――僕…本当にこれで、ソンジュさんの子供、妊娠できるかもしれない。     「……ふ…、…」    ――好き…それでもいい。…僕、貴方の子ならいい。      意外と、僕…――今は普通に、幸せだ。      このままソンジュさんに、すべてを委ねてしまいたくなる。…幸せだ…幸せ…しあわせ…――それなのに、胸が苦しくなり、息ができなくなる。      今朝まで性奴隷だった僕が――今は、こんなに満たされている。          もしこれで、赤ちゃんができたら…――一人で。          一人で、育てよう。  性奴隷として犯されたセックスではなくて、恋人として愛された、えっちでできた子供…――幸せな子だ。    それに、もうケグリ氏たちの元へ戻る必要はなくなったのだ。…かといって、まさか本当に、僕なんかがソンジュさんと結婚できるはずもない。      でも、もし本当に妊娠したら――産みたい。      ソンジュさんの赤ちゃんなら、僕は産みたい。      一人ででも、その幸せな子を育てたい。       「………、…」        こうしてソンジュさんと甘いキスをしている…今、僕は、今死んでしまいたい…――。                 つづく

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