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【9】Frozen watchfulness

 ※このお話には「ソンジュ(攻め)」の、過去の虐待等の要素が含まれています。会話文のみでふんわりとながら児童虐待の要素があるため、そういった内容が苦手な方は「※」がふられたページは読み飛ばしてください。  また、もし万が一途中でご気分が悪くなられるなどの症状が出た場合は、すぐに読むことを中断し、ご自身の体調やお心に寄り添ってご自愛くださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。※       ×××                 「――はぁ…、…」    まだ頭…ちょっと、ぼーっとする…――。  広い浴槽のなかで脚を立てて座り、腿の裏を抱えている僕は――ほどよい温度の泡風呂に浸かったまま、後ろからソンジュさんに、片腕で抱き締められている。  この浴槽の隣のガラスケースから、岩の間を細く流れてゆく水の音――ちょろちょろちょろ…と――岩の一割に浸った水、その下層へと溜まってゆく音。    ――ごく、ごく、ごく。   「……っはぁー……」   「………、…」    僕の後ろで…ごく、ごく、ごく、とペットボトルから、ミネラルウォーターを飲んでいるソンジュさんの、喉の音も、まあ…当然のことなんだが――音がこもって響く浴室という場所に付け加え、そもそも真後ろに彼がいるために――やけに響いて、大きく聞こえてきた。    ちなみに僕は、先にそれを飲ませてもらった。  だが、まあ飲ませてもらった…というのは、いろんな意味で、ともいえる。――というのも実はそれ、ソンジュさんに口移しされるところから始まったのだ。    ただとはいっても、一応の大義名分としては、ソンジュさんいわく――。   『……ユンファさん…俺が思うに、今貴方はたくさん汗をかきましたよね。…となれば絶対に、今ユンファさんのお体は、水分を欲しているはずです。』    まあ、そりゃあそうだろう。  …そうわざわざはっきり言われなくとも、それくらいはもちろん僕にもわかっていたことであり、僕はソンジュさんのそれに、肯定の意を表して頷くほかなかった。  すると語調の勢いを笑みで増したソンジュさん、もうおわかりですね、というように。   『…そう、今の貴方は、水分補給を急がねばならない体調に相違ありません。――が、しかしながらユンファさんは、いまだ、水を飲むことに罪悪感を覚えられるかもしれませんので……ね? 俺が謹んで、ユンファさんにお水を飲ませて差し上げましょう。』    こう言う彼、あまりにもにっこりだった。  とは、まあつまり…――自分が口移しをしたら、罪悪感もクソもなく、僕が水分補給をできるだろう、と。  しかしソンジュさんが、それで単に、僕に水を飲ませてくださることはなく――水を飲ませてあげる…というのを理由に、僕はすっかり舌を絡めとられて、   『……んん…っは…、ソンジュさ…ん、んうっ』    な、なんか、おかしくないか?  …と、抗議をするタイミングも許されないほど、溺れるように何度も水を、何度も何度も口移しされ…――というか、もはやそれを口実に…? ――そのままたっぷり舌を絡めとられ、口の中じゅう全部というほど舐めまわされ、息をつく間もないほど、ねっとりとしたキスをされた(ただ()()()()は一応守られており、都度ソンジュさんは、ちゃんと水を口に含んでそのキスをしてはいた)。    しかし…もちろんキスをされていたんじゃ、普通に飲むよりも嚥下が下手になるわけで、すると彼――僕の顎や、首筋に伝った水を、ペロペロと舐め取ってきた。   『……っ♡ ぁ…だめ、ソンジュさん…、…』    もはやここまでされて、次のソンジュさんのセリフが推測できないほど、僕は馬鹿じゃない。   『…ふふふ…、なんて色っぽい…もう一回、します…?』    と。――もうはっきりいって、端っからそのつもりで彼、僕に水を口移ししていたんじゃないだろうか、とさえ思えてきた。…とはいえ、なかばはソンジュさんの親切心を信じてしまっていた僕は、やっぱり馬鹿である。   『……ぁ、あの…すみません、もう大丈夫…自分で、…自分で飲みますから……』    しかし…僕はもうはっきりいって、()()()()なんて元気はどこにもなかった。――あれだけしこたまイかされて、今もなお子宮に満ち満ちた彼の精液がずん…と重たいくらいなのは、何も、たっぷりとナカに出された、人並み外れたアルファの多量な精液の、その重量ばかりのせいじゃない。  そんなことくらい、性奴隷をやっていて、毎日毎日人に犯され、中出しセックスばかりしてきていた僕が、わからないはずもなく。   『…ありがとうございました、…』    と、僕は愛想笑いを浮かべつつ、ソンジュさんの手にある、その冷たいペットボトルをパッと奪い取ったのだ。         

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