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「……へ…、そ、ソンジュさ…――。」
違う。
「…大丈夫? オメガ排卵期来てるっぽいけど」
「……、…、…」
誰、だろ…この、男の人。――ソンジュさんとは似ても似つかない、髪の毛の真っ赤な、チャラついた印象の人だ。
「……――。」
馬鹿だな…僕――なんでソンジュさんから逃げてきたのに、期待しちゃったんだろう。…ソンジュさんが迎えに来てくれた、なんて…逃げ出したくせに、――ありえないだろ。
ソンジュさんが僕を追い掛けてくるなんて――ありえない。……僕はこの男の下 心 を察してはいるものの、全部どうでもよくなって、うつむいた。
「………、…」
多分この男、オメガ排卵期がきている僕を…――あ…、
「……? あなた、本当にこの人の連れ? なんだか突然だけれど……」
「いやそうっすよ、ねえ? 俺めっちゃ心配してたんだよ〜、オメガ排卵期きてるのに、突然怒って走り出すから…オメガ排卵期くると、精神的に不安定になっちゃうみたいで。――ほら、行こっか?」
「………、…」
僕、体に力が、入らない…――そっか、僕、…オメガ排卵期……――だからずっと、頭がなんとなくぼんやりしていて、上手く体に力が、入らなかったんだ。
「…とりあえずどっかで休んだほうがいいと思うんで…ほら、行こ。」
「………、…」
もう…いいや、別に、なんでも…――なんでもいいや、どうせ犯されるんだろうが、――自業自得なんだし…そういうの慣れてるし、…今更犯されたからって、僕が何を失うんでもないし……。
僕はその男の人に腕を引かれるまま、よたよたと歩き出した――。
つづく
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