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「…もう頭でぐるぐる考えるのはやめて。貴方の素直な気持ちのままに、俺を求めてほしい。…俺を信じてくれ、ユンファ。全部俺に任せてくれよ、頼むから…――一人で全部何とかしようって背負うんじゃなくて、頼って、俺を。…守らせてくれよ、俺に、貴方を。」
「……、……は、…」
息を呑むと、それを吐き出せないでいる。
僕は、その切ない色をしたアクアマリンの瞳に、魅入られた――どう、してだ…?
しかし、僕はソンジュさんを見ていられなくなって、さっと目線を伏せた。――なぜか泣きそうだ。
まるで深くも、透き通った海のようだった。
表面は潤んで淡い水色、しかし見れば見るほど奥まって…奥まって奥まってゆくと、どんどん青が濃くなってゆく――アクアマリンの瞳とはその通り、まるで透き通った海のように美しい、青の瞳。
「……、…、…」
今こう言ったソンジュさんは、何か…――神様ではなく、お上品な九条ヲク家の紳士というのでもなく、癇癪も起こしていない、き み にもなっていない、ただ、
ただの、一人の青年。
一人の美しい青年が、僕のことを好きになり、ただ思惑も何もなく、ただ素直に、まっすぐに、僕への恋心だけを理由に、僕を熱心に求めている――だけ、のように思えた、すると。
瞬時、痛いほど胸がドキッとした。
そしてかああっと、耳から頬が熱くなった――。
いつものようにロマンチックな、綺麗で丁寧に飾られたようなセリフでは、なかった。――むしろ、普段のソンジュさんに比べたら、ほんの少し稚拙 なところがあったような、…それなのに僕は、
「……、…、…」
今もなお、どうしようもなくドキドキしている。
凄く、顔が熱い。――目がほんのりと潤み、胸の中に膨らんでいる…軽くて柔らかい、何かとてもむず痒くなるような気持ちが、風船のように膨らんでいる。
僕の胸の中、胸骨にぴったりと添うほど大きく膨らみ、ドク、ドクと大きく速くなった僕の鼓動が刻まれるたび、今もなお膨らみ続けている。
どこか心地良くすらある、ワクワクしているというのに近いようだが…これじゃ今にも口からはみ出てしまいそうだ、これが爆発したらどうなってしまうんだろう…――悪い予感も、良い予感も、不思議な期待感もある――少し痛い、だけど、軽くて柔らかい、だから決して、嫌じゃない。
「……、……?」
目を瞑る。
どうしてこんなに、ドキドキ、してしまうんだ。
なぜ僕は、ソンジュさんの新しい顔を見るたび見るたび、ドキドキしてしまうのだろうか…――。
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