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                  「…んーじゃあな。でもあんまり時間かけないでくれよ、ソンジュ…ほらぁ、飯も冷めちまうし…な?」   「…ええ、善処しますね」   「おお…、ユンファさんも、早く切り上げられるように。な…、……」  僕の…僕たちのことがいまだ気掛かりな様子のモグスさんは、どこか後ろ髪を引かれているようながらも、この部屋から出て行こうとしている。――その人が扉のドアノブに手をかけ、ガチャリと開いたその瞬間、   「……、……ッ!」    僕は口を開いた。――やっぱり今助けを求めなければならない――しかし僕は、あ、とすら声を出せなかった。  声を出そうと息を吸い込んだその瞬間、僕が声を発しようとしたそのタイミングでガバッと、後ろから、ソンジュさんの大きな手に口を塞がれたからだ。   「…んグ、……ッ」   「…………」    そして後ろにぐっと強く引かれ、顎が真上に、…僕の顔は、ソンジュさんの顔のほうに上げさせられる。  凍り付いたような、冷ややかな淡い水色の瞳は僕を見下ろし、「しーー…」――バタン……虚しく閉じていった、この部屋の扉。   「…貴方はなぜ抗うの…? 俺たちの、()()()()に……」   「……、…、…」    運、命…――?  ふ…と解放された僕の口元、顔、僕の両手首はソンジュさんに捕らえられ、腰の裏で纏められてしまったが――僕は扉のほうへ向かって、   「っモグスさん! 待ってください、僕っ…!」   「…ふふふ…――()()だよ」   「……っ?」    笑みを含ませてそう言ったソンジュさんは、僕の耳元で、こう囁いてくる――。   「…この部屋…()()()()なんだ……」   「……、…、…っ」    防音仕様――いや、だからさっきモグスさんは「外に出たら大声で叫べ」と言ったのか、――僕はその場で踏ん張り、後ろで纏められた手を解こうと上体を激しくよじる。   「…嫌、やめてくれ、嫌だ! つがいになんか、…」    僕は後ろ手で拘束されていながらも肩を、体を捻り、抵抗をする。――しかし僕のその抵抗をものともせず、ソンジュさんはグイグイと僕を後ろに歩かせる。  正直力では敵わず、踏ん張っても駄目なのだ、ドタッ…ドタッと、無理にも足が後ろに引かれて動いてしまう。   「…やめ…っ! お願いしますソンジュさん、ソンジュさ、お願い、駄目、つがいにだけは……!」   「…ユンファさん、落ち着いてください…――俺は()()()()()()と言っているでしょう…? 俺はきちんとした話し合いもせずに、無理やり貴方のことをつがいにするような真似は、本当にいたしません……」    そのまま僕は、後ろ向きに歩くソンジュさんに導かれ…ドタッとほとんど、尻もちをつくような形で座った。  あの茶色い二人掛けのソファ――目の前のテーブルには空の白いティーカップ、白い磁器のティーポット……ティーセットが、非情にも冷たく白く光っている。   「…まずは落ち着いて、あたたかいお紅茶でも飲みましょうね……」   「……、…、…」    そう妖しくも甘ったるい声で言ったソンジュさんは、僕の背後にいる。  つまり僕は今、ソファに座ったソンジュさんの、その開いた脚の間に座らせられたようだ。――ただ、()()()()()()()と彼は後ろから片手で、僕の腹を抱きかかえている。   「…落ち着いて、大丈夫だからね…? 愛しているよ…誰よりも愛してる、誰よりも、誰よりも…ユンファ…愛してる…――俺はただ、愛する貴方に優しくしたいだけ……」   「………、…」    ふわり…後ろから抱き締められる――ソンジュさんの体温が、僕の背中に纏わりついているよう――だが僕は恐ろしくてたまらず、身が竦み、その上血の気も失せて寒くなり、カタカタ震えている。   「…大丈夫だから…まずは落ち着いて、話をしましょう。安心してくださいね、ユンファさん…。俺は何も、ユンファさんのことを無理やりつがいにしよう、だなんて――()()()()、そのように考えているわけではないのです……」   「……、…、…」      ()()()()――?         

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