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「……よし。…」
よしよし。
もちろん拒まない。僕は、ソンジュさんからのスキンシップはもう一切合切拒まない。…し…できればこう、やり過ぎない程度に、できる限りこう、もっとこう…なるべく、ソンジュさんへと自らも、こう…こう――もっとスキンシップを、試みてみよう、…か。
「……、…、…」
想像しただけでもはにかんでしまう僕は、じわ…と熱が両頬の内側から肌表面へ、滲み出るのを感じている。
いや、しっかりしろ僕。…どう考えてもそんな、今は悠長に恥ずかしがっている場合でもないだろう。…そうしている間にも、一週間なんてあっという間に過ぎていってしまうのだ。それこそ思い切って、もうちょっと大胆にいかなければ僕は、一生後悔してしまうかもわからない。
そうだ、大胆に。…大胆に――例えばソンジュさんを抱き締めてみるとか、自分からキスをしてみるだとか、彼の頭や体を撫でてみる、自分から…セックスを誘ってみるだ、とか。…とにかく僕からソンジュさんに、積極的に触れてみるべきである。いや――もちろんやり過ぎない程度に、ソンジュさんに引かれない程度に、あまりこう鬱陶しくならない程度に、ベタベタし過ぎないように……。
「……、…」
――そうだ、ひらめいた。
ここはどうだろう、ToDoリストにしてみるのは。
『 〜これから一週間毎日、僕が自分からソンジュさんへするべきことリスト〜
・キス
・ハグ
・撫でる(どこでも可)
・セックスに誘う
・彼を褒める
・(約束通り)毎晩寝る前に最低2個
ソンジュさんが愛されるべき人である理由を言う 』
「……よし…、よしよし、頑張るぞ…。頑張れ僕、お前ならできるぞユンファ…、よし……!」
脳内でToDoリスト化してみると、何か俄然やる気が湧いてきた僕は、ココアで両手をあたためつつも意気込み、キリリと眉や目元に力が入りながらも、独りでにうんうんと頷いた。
「……よし、そうだな…、じゃあまずは……」
ではまず手始めに、ソンジュさんがシャワーから出てきたら――脳内シュミレーション開始だ――えっと…抱き締めてみるか、いや…そういえばソンジュさんは、さらりと僕の肩を抱いたり腰の裏に手を添えたりしてくるが、僕もそうしてみようか?
いやいや、それは駄目だ。そもそもできない…二メートルを越えたソンジュさんの肩を抱くのは容易じゃない。まして腰の裏に手を添えるのはどことなくいやらしいようだし、慣れない僕がソンジュさんのように、スムーズかつさりげなく、クールに格好良くそんなことができるとは思えない。
「……、…」
ではやっぱり抱き締め…いや、キスのほうがいいか…違うな、思えばキスも容易じゃない(いきなりでは僕の気持ちの面でも難しいようだが、何よりも三 十 セ ン チ の 壁 はデカい)。
ではやっぱり抱きしめるほうがいいか、あるいはどこかを撫でる、頭は二メートルを越えた彼じゃ容易でないにしろ、二の腕だとか胸板だとかをなでなで、いや…やっぱりキス、いやそれとも…セックスに誘う…? いやいや、それはさすがに思い切りすぎだ、いきなりセックスは無い。いきなりそれはドン引き確定だろう、いや危なかった。
よし――とりあえずソンジュさんがシャワーからあがったら、とりあえず彼のことを抱き締めてみよう。
どうも体格差的には抱き締めるというよりか抱 き 着 く 、というようにはなりそうだが、しかし格好的にはどちらにしても同じ行為だ。それは言い方が違うのみ、ということにしておこうか。
それで…そう抱き締めたあと、もしソンジュさんに「いきなりどうしたの?」なんて聞かれた場合は…どう…答えようか……。
「……、…寒かった、から……?」
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