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(※ 皆さまへ
いつもありがとうございます!♡♡
また、先日「おれ夢叶えたいでげす…よかったら皆さまリアクションで応援してください(´;ω;`)」と鹿は全裸土下座いたしましたが、マジでこころよくリアクションで応援してくださっているめちゃくちゃ優しい神々の皆様、ほんと〜〜〜……………にありがとう、ありがとう、ありがとうございますっ!! ホントにホントに励みになって励みに励んであまりのことに禿げておりますぅ〜…! ありがとうございます〜〜!!
で、申し訳ありません…!
ソンジュくんの妄想(よわよわ負け犬ソンジュ×セックス依存症びっちユンファ)がですな、実はものっっそい書くの楽しくって(妄想してるソンジュくんだけじゃなく僕も)、むちゃくちゃ話が膨らんで膨らんでふくらみすぎてしまいましたので(※なんか自分でも怖いんだけど気がついたら骨組み草案だけでものすごい文字数になってたので)、さすがに秘技大人の事情を発動し、ここいらで本筋に戻らせていただきますm(_ _)m
ただ元々もうそうした方がええんと違う〜〜?とは思っていたため、このお話とはまた別個に別世界線的な感じで、『ぼくはきみの目をふさぎたい』のパラレル短編『ぼくはきみに鍵をかけたい』としてそのお話も完結まで続ける気でおりますので、え〜なんかなんか続き気になるんだけど〜〜というお方はぜひ、『ぼくはきみに鍵をかけたい』のほうにもぜひお越しくださるとめっちゃ嬉しいです…!
(ちなみにもう別個のお話としてご用意はしてありますが、ここだと作品リンクが多分クリック可能リンクにならないため、よければお手数ですが僕のプロフィールからよろすくお願いします)
こちらだとエグく尻切れトンボ状態ですが、別個短編の「鍵」のほうももちろんちゃんと完結まで書きますので、気になる方はぜひそちらのほうもよろすくお願いいたします〜〜〜m(_ _)m
そしてそして、そうなったらもうどうしても二重更新になってゆくとは思いますが、一応は今んところ「目」→「鍵」→「目」→「鍵」……的な感じで交互に更新できたらいいなって、そういう感じでがんばろっかなって思っておりますので、よろしければぜひ引き続き応援のほうよろしくお願いいたします…っ!
鹿。
※ちな諸事情(他投稿サイト様の利用規約)で「目」のほうにテメーでリミットかけているエッッッシーンもタガ外れ丸居直り開き直り某しておりますので、多分「鍵」のほうは好き勝手エッッッやらかします。エロ書くのほんとはでぇすきなんだもん…! 本当は「目」も一章に一エロくらい書きてぇんだも〜〜ん…! ※)
××× ××× ×××
――では、なぜ俺がこれまで必ずスキンを着用したうえでユンファさんを抱いてきたのか。
……それは…――と、
ここでどっぷりと妄想に耽 っていた俺の肩をトントントンと叩く指先がある。――言うまでもないが、俺の隣に座っているユンファさんの指である。
「――あ、あのぉ…? 大、丈夫ですか……」
「……、…」
さすがに現実に引き戻された俺ははたと薄目を開けた。…現実の俺は今このスイートルームの茶色い革張りのソファに腰かけ、胸の前で腕組みをして、さらに脚を組んで座っている――なお「足組み」は男が勃起を隠すための常套手段でもある――。
……ふと隣へ顔を向けると、(もちろん現実の)ユンファさんが何とも言い尽くせない硬い苦笑いを浮かべて俺を見ていた。…彼の薄紫色の瞳にはこうした困惑がやどって揺らめいている――『…ちょっと考えたい…とはいえ、さすがに長すぎないか……?』
――『いや、まあ「ちょっと考えさせて」といった彼の気持ちはよくわかる。
セックス依存症で恋人一人じゃ満足しない、絶対に浮気すると悪びれもせず言い切る、不誠実でどうしようもない淫乱な人。…更に(自分の自業自得の)多額の借金があって、完済後も風俗店の勤務はたくさんの人とセックスがしたいから辞めたくない。つまり「誰か一人だけのもの」なんて制限はかけられたくない、そしてたくさんの人たちと享楽的に遊びたいという我は通したい、それを含めた何でも許してくれる「自分にどこまでも都合のいい彼氏」なら欲しい我儘な人。
また買い物依存症で救いようのない散財家で、前の彼氏を破産させかけてもなお、自分は悪くない、相手のほうが自分にかける愛が足りなかっただけとかいう、傲慢な人。しかも僕は、要するに僕と付き合いたいなら「破産するまで僕に貢げ」といったつもりだ。
そして僕には“ご主人様”がいて(それと借金に関しては本当のことだが)、僕は真性のマゾヒストで、SMプレイ好きの変態。“ご主人様”との淫らな関係性は続けたいし、もしかしたら彼にも変態的なSMプレイを強いるかもしれない……。
そんなほとんど破滅的な快楽主義者で、いわば堕落的で不誠実な人、遊びならともかく恋人になんか誰もしたくないだろう。それこそ僕でもすぐに「やっぱりすみません」と思い留まるような人だ。――だから、むしろ「ちょっと考えさせて」と考えただけ、彼は僕よりもう少し優しい人だとは思うが、ただ………』
「……はは…あの、どう…なさるか、決まりました…?」
とユンファさんは必死に笑おうとして、やはり苦笑をその美貌の上に深める。――彼の困惑した瞳がチラリと下がり、ふっと目をそらすように自分の揃 えられた両膝へ向く。
――『いや、彼が長いこと考え込んでいるようだったのはきっと、まあ真面目に僕のような最低な人と交際できるかどうかで悩ん…………でいる人が何 故 勃 起 し て ……というかデ、…服の上からでもわかるデk……いや、いやこの人、いろんな意味でどういう神経…、…あれのどこの何に勃起する要素があったんだ…? 彼、一体何に興奮して勃起したんだ……?』
「…ふふふ…、……」
何って――淫らな貴方の妄想に、だけれど。
……だけれど、あぁもう少し……しかしいまだ夢から覚めたくない想いのある俺は、もう一度だけ余韻にひたるため目を瞑る。もう少し時間があったらな…もっとじっくりと妄想できたのだけれど……。
「……うん…いやいい。いいね――。」
俺は目を瞑ったままニヤけながらコクコクと頷いた。
「……はぁ…?」
「…素晴らしいな、セックス依存症か……」
セックス依存症のユンファさんか…やはり素晴らしいね。これは唐突に俺のもとへ舞い降りてきた神のような素敵なインスピレーションであった。
――このインスピレーションは今後末永く俺のヌキネt……いや、必 要 と あ ら ば 思いだすような、一つの大 切 な 作 品 と昇華することであろう。…何なら文章にも起こそうかな…?
ワクワクするね。「あの日」以来――ほとんど「あの日」と同じような動機で、俺は自分の情熱に確かな形をもたせようとしている。…十三歳の俺の動機よりかはもう少し大人っぽいものだけれど。
いや、買い物依存症のユンファさんもいいよね。
俺の蓄財を使い果たそうとしてくるユンファさん…カード類の全て入った俺の財布をユンファさんに預ける……それも大変なことだ、興奮するね。
俺の財産を好き勝手つかう悪い男のユンファ、『お前なんて所詮僕のATMなんだから』と俺のことを鼻でせせら笑うユンファ、もちろん俺は貴方の前に跪 き、持ちうる全財産を喜んで自分の頭上に掲げるよ……いけない。俺はユンファさん相手だとマゾヒスティックな歓 びをさえ享受できてしまうようだ(とはいえサディストとマゾヒストは表裏一体の精神構造をもっている)。
いやしかし、さすがの俺でもケグリ(ご主人様)の存在だけはどうしても認められないな。
……だってキモいんだもんアイツ…生理的に無理だし嫌。この世で唯一俺が辛 うじても抱けない男、いや人類かもしれない。いや人類でさえないか…アイツはカエル。蓼食 う虫も好き好きとはいうのでアレでも需要はあるのだろうけれど、俺には踏み潰す興奮と快感をしか与えないカエルだ。ケグリとセックスするくらいなら豚のほうがマシ。
仮にもユンファさんに、どうしてもケグリとの関係を続けたいとか本気で言われてしまったら……やっぱりあのガマカエルは彼の目につかない阿鼻 地獄に沈めるしかないだろうね。
――とはいえSMに性的嗜好をもっているユンファさんというのは(俺の先ほどの妄想…いや、考 え にも見るように)俺のドストライク性癖である。…別にユンファさんが強いて性奴隷でいたいというなら、何もわざわざケグリとの関係を続けるまでもない。俺が彼のご主人様になってあげればよいだけのことなのだから……したいな、ユンファさんとSun&Moonプレイ。
ここで俺はゆっくりとまぶたを上げ、伏し目の程度で留める。そして胸の前で組んでいる両腕の片方をおもむろに上げ、その片手の人差し指と親指で顎の側面をつまむ。
「……、…――。」
――なるほど……。
やはり俺には、俺の幸福な人生には月下 ・夜伽 ・曇華 という人が必要不可欠である。
というのも、
ひょっとすると俺は、ユンファさんが側に居てくれさえすれば――無敵になれるのではない……?
いや、もとより俺は完璧な男である。
そして、もちろん月下 ・夜伽 ・曇華 という男もまた完璧な男である。しかし我々はどこまでいっても陰陽 の関係性か、…太陽が陽、しかし俺の生まれた冬は陰、…月が陰、しかし彼の生まれた夏は陽、…
……そうして俺たちは元より完璧な陰陽を持ち合わせてはいるが、二人揃ってより完成されるつがい同士というべきか、元より完璧な存在が二つ厳密に組み合わされることで「陰陽太極図 」が完成され、俺たちは二人揃えばお互いにより強大な完成された力を得られる――我々は龍虎 か双龍 か――俺が何を言いたいかといえばそう、虎 に翼 と獅子 に鰭 、水を得た魚か駆け馬に鞭 、要するに龍 に翼を得たる如 し――ということ。
いまいち要領を得ないかな?
まあこのたびの俺の「気付き」を簡単にいえば、それでなくとも天才的発想力を持ちうる天才作家の俺の人生の傍 らに、たった御一方 月下 ・夜伽 ・曇華 という美貌の月の男神を据 えるだけで――(色 ん な 意 味 で 俺のQ.O.Lが格段に向上するばかりか)俺の作家としての創造のほうもまた絶好調というほど、もはやスランプなど訪れようもない、というほど捗 る、ということである。
……いやはや、しかし今更といえば今更の「気付き」である。俺は「あの日」にもユンファさんにインスピレーションを受け、そうして彼にインスピレーションをうけて執筆した『夢見の恋人』で華々しくデビュー、更にその作品は大ヒット御礼……といったように、思えばこれは今に始まったことでもなかった。
「…なるほど、やはり結婚をしなければ……」
「…え…?」
「…むしろこれで結婚出来なかったら困るね……」
つまりユンファさんが俺の側に居てくれさえすれば、彼のその至上の類まれな美貌はもとより、ちょっとした彼の言動にさえ俺はあのようにインスピレーションを受け、自然とああした楽しい妄s…いや創造ができる。し放題だ、むしろもっと妄…創造をしたかった、時間が足りないと思ったくらいだったよ。
つまり畢竟 彼こそは俺のインスピレーションの湧き水 、ムーサ(ミューズ )九人全員をひきつれた我が芸術の神アポローン……ということはもはや、俺がユンファさんと結婚をすれば、鬼才作家「pine 」もまた全く鬼に金棒…ということである。
なるほど…――。
ユンファさんと結婚すれば幸福度の向上は全く青天井、不幸とは全く対蹠 的な地点に到達する俺の人生、この方を手に入れさえすれば俺はこの世の幸福すべてを手に入れられる――誰もがおどろく奇跡の蒼い月、しかし俺にだけ微笑む芸術の男神、誰もが垂涎 必至の妖艶な高嶺の華たる美貌の月下美人、しかしこの俺にこそ見合う血統の崇高なる銀狼 ――気立てがよく賢い美しい理想的な夫、恋、愛、家庭、芸術、やりがい、仕事、富、名声、…すなわちそれら全ての幸福は単独に存在しているわけではなく、それら幸福の全ては月下 ・夜伽 ・曇華 という月の男神ただ御一方に集結している。
畢竟――我が幸福とは月下 ・夜伽 ・曇華 である。
毎朝目覚めると隣にある惚れこんだ夢のような美貌、俺の自慢の旦那さん、昼間は賢く冷静に卒なく振る舞っている俺の夫は、夜になると毎晩ベッドの上で可愛らしく泣いてしまう、『あっ…♡ …〜〜っもう、奥ばっかり、ゃ、♡ あぁだめ…っ♡ ソンジュのおちんちんおっきくて、♡ あん…っ♡ あ、♡ っこら、だ、だめだったら、♡ …んんん…〜〜〜っ♡♡ …おねが、…もうは、はげしくしないで、お願い…また僕、ぃ、イきそう……!♡♡』なんてね……。
「…んふふふ……」
俺のプライベートから仕事まで何もかもが充実。
毎日朝から晩まで充実――世の幸福の何もかもを得る、何もかもが完璧……うんなるほど。
――素晴らしいじゃないか!
「なるほど、ええ構いません。むしろ明るい未来しか想像出来ないくらいですよ――どうぞ、俺と結婚してください。…いえ、あるいは結 婚 を 大 前 提 に 俺の恋人になってください。」
と言いながら俺は、仮面の下で満面の笑みを浮かべて隣の彼へ揚々 その顔を向けた。
「……、…、…」
しかし俺へ向いたままのユンファさんの表情は、やけに愕然 としたものであった。
あるいは唖然 ともいえるか、彼はその端整な黒眉をこわばらせ、元は涼やかな切れ長のまぶたを今はかっぴらいているというほど剥き、更にはその桃色の肉厚な唇をやや大きめに開け、そうした、にわかには信じがたいものを見てしまったかのような驚きと疑念の入りまじった顔でただ俺のことを見ている。
――『……は…?』とユンファさんの小刻みに揺れている薄紫色の瞳の中でさえ言葉を失っている。
「……ははは…いえ一度は考えてみたのですが、…」
……素敵なパラレルワールドを。
「…しかし思えば、そう…何の問題もありませんでした。」
そもそもほとんどユンファさんの嘘である。
あれらは俺に嫌われよう、ひいては俺にユンファさんとの交際を諦めさせようという彼の嘘なのである。
まあ本当に彼がそういった人であったとしても、ユンファさんなら俺はそれはそれで何ら構わないが、それらが彼の嘘であればなお俺たちの交際において障害となり得る要素ではない。
よって「何の問題もない」というのが俺の結論である。
「……、…、…」
ユンファさんは先ほどと同じ驚きと懐疑の入りまじった表情で固まっている。――『…はあぁ…っ!?』
――『こっこの人、正気か!?』
「ちょっ……ちょっと、考え、させて、…ください…」
といったのは、今度はユンファさんのほうである。目を伏せた彼は一旦状況整理がしたいらしい。
しかし一体何を考える必要があるのやら――面白くなってきている俺は「ええ」と我ながら優雅に答える。
「…どうぞ、お好きなだけ…ね。…んふふ…――。」
ちなみに、こうして本当は俺と交際をする気など毛頭ないユンファさんが、なぜ先ほどはああして俺に思わせぶりな態度を取った――あたかも俺の交際に応じたかのように見せかけた――か。
その理由とはどうやら二つである。
まず一つにユンファさんは、俺の気持ちが本当に「今夜に留まらないものか否か」――俺が来たる翌朝以降にも末永くつづく「本当の意味で」自分に愛の告白をしてきたのか、はたまた今夜に留まる「恋人プレイとして」自分にしてきた愛の告白なのか…と、彼はどうしても「本当の意味で」俺が自分に愛の告白をしてきたという確信がもてなかった。
それこそ涙しながら切実に愛の告白をしてきた俺を見ていても、である。――およそ彼以外の人であれば割に易くその「確信」を得ることだろうが、何せ今のユンファさんは『僕なんかに本気で惚れる人などこの世にいるわけがない』と思いこんでいるため、なかば俺の涙に『もしや本気なんじゃないか…?』とは感じながらも、それでもその疑問符は完全に取り払えはしなかった。
そして「恋人プレイ」として今夜俺の「本当の恋人」を演じる義務が自分にあるとも考えているユンファさんは、俺の愛の告白に「はい、お付き合いします」とすべからく答えるべし、とも思い、頷いた。
仮にも俺が自分に「恋人プレイとして」愛の告白をしてきていた場合、むしろ「恋人プレイ」のさなかに「お断りします」と交際を拒否することは、今夜の仮初 めの甘い雰囲気に水を差すことにもなりかねない。――うっかりか、あるいはよほどの理由がある場合でもない限り、風俗店のキャストがプレイ中に客を白けさせることは禁忌 である。
と…いったような考えが、先ほど俺に「万が一貴方の気持ちが本当だったなら…」と言っていたユンファさんのその瞳に映っていた。
とはいえ、なかば以上は俺の気持ちが本物であるとわかっているユンファさんは、こうして「彼のような人との交際は不可能だ」と俺に思わせようとしているのだがね。
次に二つ目の理由――それは、真っ向から交際を断られた俺が、万が一にもそれによって逆上しないように…という危惧、警戒心からの理由もあったようだ。
それこそ俺はユンファさんの目に「危険人物」とも見えているのである。――基本的に俺はユンファさんに細かなところまで気の利く気遣いのできる優しい人、包容力があって、素敵で格好良い人だと思われてはいる(その事実は気分がすこぶる良いね)ものの、その一方で彼にも俺の性格の内にある、決して少ないとはいえない感情的な、直情的な、情緒不安定な要素もまたしばしば垣間見えていた。実際それに関しては俺自身も否定できない。
ユンファさんはさすがの観察眼で、俺の良いところをこうみとめている。――目に見えて泣いたり怒ったり高笑いをしたりと感情表現がストレートにできる彼は、まるで純粋な子供のように愛らしい人だ。それにともなって感受性もまたきっととても豊かな人であり、だからこそ彼は誰に対しても優しくできるし、また、他の人よりも細かいところにまで気を遣うことができる人なんだろう。
だが……としかし、ユンファさんはこうも考えた。
……とはいえ…そうして人よりもうんと感情的な人は、ひとたび悪い方向に感情が傾いてしまえば、怒りや憎しみといったものに取り憑かれたようになって、得てして「危険な人」に豹変してしまうようなことも少なくはない。
これはさすがというべきだろう。かなり俺という男の的を射た考察である。実際、そう。その通り。
……ただし、俺はもともと「駄目元」でユンファさんにあの愛の告白をしたので、いくら俺が癇癪 持ちの男とはいえ、あれで彼にはっきりと交際を断られた場合であっても、それによって俺が「危険な人」に豹変してしまうようなことはなかったろう。
とにかく、要するに俺は――俺のこれまでの言動を冷静に観察していたユンファさんの目に、(優しくて魅力的なところもたくさんある人だが)ひとたび激昂して怒り出したら何をするやらわからない危険な人、というふうに見えているようだ。さすが。
……そしてそうした俺の人物像を踏まえ、ユンファさんはこう危惧をした。
それでなくとも彼(俺)は今しがたまでボロボロ泣いていたくらいだから、今彼の精神状態は更に、かなりデリケートになっているはずだろう。その状態の彼相手に、はっきりと交際を断る勇気は自分にない。
これでまともに交際を断ったら、もしかすると彼はかなり怒るかもしれない。普段優しい人ほど恐るとよっぽど怖くて、何をするかわからないものだ。
彼が激怒してしまった場合、自分は何をされてしまうかもわからない――。
ましてや自分には今――逃げ場がない。
……と、ユンファさんは警戒した。
確かにこのスイートルームは広いが、いわば広 い 閉 鎖 空 間 なのである。
その広さが仇 となり、ここから出入り口のエレベーターへ走ってゆく間に、自分は俺に捕まってしまう可能性がある。…そして、そうした万 が 一 という展開が突然起こったその瞬間に、激昂している俺相手ではなお、まさかそれとなく理由をつけて外へ逃げられるはずもない。
つまり突然火山が噴火してしまったなら、自分はひたすら出入り口のエレベーターへ向かって走って逃げるしかない、が――俺が身体能力の高いアルファ属であることを知っている彼は――男の自分であろうと、アルファの俺には力でも走る速度でもまず敵 うはずがない。と、そう考えたのである。
よってユンファさんは、一旦はあたかも俺の交際の申し出を承諾したように見せかけた――その一方で本当は俺と交際をするつもりなど毛頭ない彼は、あえて思いつく限りの滅茶苦茶 な自分の虚像を作りだし、俺に嫌われようとしている。
ひいては……「(そのような滅茶苦茶な人とは)やっぱり付き合うことは難しい」と、あわよくば俺に交際の申し出を取り下げさせようとしているのである。
しかしユンファさんは、むしろ俺 の た め に 、そうしているところもあるようだが――ね。
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