652 / 689
112
「ところで――あの、カナエ君…?」
ふとうつむいたユンファさんは自分の下腹部のまえでそのカッターシャツの袖口をつかみ、じわ…と頬を赤らめながら、はにかんだ小声でこう言った。
「…ベッドに、行きませんか…」
「……ベッド。」
ベッドというのは要するに寝台、夜具、寝床、寝具、概してベッドフレームという長方形の台のうえにマットレスを敷き、好みによってはそのマットレスの上に更にふとんを敷いて、その上に寝ころび……。
……ユンファさんが目を伏せたまま少しその眉間あたりを険しくする。『何で伝わらないんだ…?(まるでベッドを知らない人のようだが、そんな人まさかいないよな…?)』と彼は内心いぶかりつつ、あくまでも表向きは恥ずかしそうな小さい声でこう言う。
「……、ですからその…――さっき乳首に触れられたとき、凄く気持ちよくて…もっと気持ちよくなりたいなって…もっとされたくなっちゃいました…。もっと貴方に触れてほしいなって…――だから僕、もう我慢出来ないんです…、……」
そこで顔を上げたユンファさんが、切ない表情でじっと俺の目を見つめてくる。その透明度のたかい美しい薄紫色の瞳は、脆 そうに小刻みに揺れている。
「ですから――どうか…僕を抱いてください……」
「…だ…、……」
だく。だいて。抱……だ?
だいてほし…だいてくだ、――だく…?
濁 、諾 、駄句 、ダクダク…――。
「…だく……」
「……、…――い、行きましょう…?」
埒 が明かないと俺の片手を取ったユンファさんが、俺のその手を引いて歩いてゆく――あの天蓋 付きの広大なベッドへと、俺は彼に連れてゆかれる。……なるほど俺は今から初恋の美男子を濁、いや抱くこととなるようだ。もちろん諾。
「…………」
「……、…」
もとはミニバーへと向かって歩いていた俺たちである。
つまり壁沿いにあるミニバーから向かって右側のやはり壁沿いに位置するそのベッドまでは、スタスタとせっかちに歩くユンファさんのその歩度もあって、そうかからずたどり着ける。
そうして俺のホテルのスリッパを履いている足の裏が、ベッドの近辺に敷かれている真紅と紺の模様に金刺繍がほどこされたペルシャ絨毯を踏む。――いよいよ間近にせまる、そのどっしりとしたキングサイズよりも大きな広いベッド、金の房 べりが華美な楕円形の天蓋からひろがるかすかに透けている白いカーテンは、洞穴のように俺たちの入りこめる入り口を斜めった三角形に開けるかたちで、ベッドの足下までその裾野を優雅に広げている。
その斜めった三角形の入り口からは、白いふっくらとした上等な羽毛ぶとんと、それの足元に横一線にかけられているベッドスローが――シックな黄緑に金刺繍のペルシャ絨毯柄のベッドスローが――、ラインアクセント的に横たわっている。…ちなみにベッドの足下のさらに下には、そのベッドスローと同じ柄の長椅子 が、その豪奢な金の猫足を四つ、ペルシャ絨毯にちょんと上品に置いている。
「……、…」
まあ、そう…――。
もちろんあの魅惑の洞穴にユンファさんと入りこむというのは、俺とて決してやぶさかではないことだ。
しかし――と俺はおとなしく彼に手を引かれていたところを、つっと立ち止まる。するとユンファさんもまた立ち止まりながら、ふと背後の俺に振り返る。
「……? どうかしました?」
「…あの俺――まだシャワーを浴びていないのだけれど……」
と俺が首をかしげると、ユンファさんがふと妖艶に微笑しながら俺に向かい合い――「じゃあ…」と色っぽい声で、このような信じがたい提案をしてくる。
「…僕がカナエ君の全身を丁寧に舐めて、隅々 まで、僕の唇と舌で綺麗にさせていただきますね…?」
「……は。」
何をおっしゃっているのやら……。
ただしユンファさんのこれというのは「演技」である。まあ当然ではあるが、彼とて本気でそのようなことをしたいとは思ってはいない。
……要するにユンファさんはあくまでもすべからく「仕事として」、風俗店のキャストである自分はこのようなことを言うべきだ、としてこれを言っているということである。――しかしするとユンファさんは、あ く ま で も 仕 事 と し て 、二人がシャワーを浴びる前に(彼の仕事である)プレイを進行しようとしている…ということにもなるわけだが……。
しかしそこで浮上してくるのはそう、俺が前にも思っていた疑問である。
――どうも矛盾していないだろうか?
まず風俗店には性病予防のため、プレイ前には必ず客にシャワーを浴びさせるというルールがあると俺は聞いている。ましてや『DONKEY』の公式サイトにも、『性病予防のためプレイ前のキャストとの入浴をお願いしております』との記載があった。
――また、いわばその「義務の入浴」には消毒作用の高いうがい薬をもちいてのうがいも含まれており、そして客の体も消毒作用のあるボディーソープをもちいて洗うわけだが、その際に彼ら風俗店のキャストは「あるチェック」も済ませるという。
というのはもちろん、客が性病持ちか否かのチェックである。……性病にかかっている男の陰茎にはそれらしい兆候がある。その兆候とは、たとえば消毒作用のあるボディーソープが滲 みて痛がるだとか、そもそも陰茎に性病の症状が見られるだとか、といったものである。
そうしてキャストが入浴によって客が性病に罹患 しているか否かのチェックをするということは、場合によってはプレイを断る、適宜 フェラチオにおいてもスキンの着用を客に頼むなど、キャストの自己防衛のために必要な対応の指針となる重要な行為である(そのため薄暗い浴室にキャストを連れて行こうとするだとか、入浴を断るだとかの客は、そもそもプレイを断られることが多いそうだ)。
ちなみに『DONKEY』は高級店ともあって、性病対策には殊更力を入れているとのことだが――それを具合的にいうと、キャストの性病検査は毎月二回実施、更にキャストに性病予防薬を毎月配布、といったような取り組みをしているらしい(公式サイトにあった)――、そもそもオメガ属は他属性にくらべて性病には罹患しにくい体質だとされている。
それは月一度のオメガ排卵期の健康効果によって彼らは新陳代謝がどだい良く、ともなって免疫力もまた他属性よりも高い。さらに、そのオメガ排卵期によって体内の毒素を排出する(全身を内蔵からクレンズする)ほか、粘膜感染においても子宮内からの分泌液が殺菌作用が高い(排卵された卵子を壊す成分であるため、それは当然である)ため、その分泌液がおりてくる膣内からアナルまでその殺菌液に守られているから感染しにくいのだそうだ。
しかし、だから何だという話でもあろう。
……もちろん俺は性病になど罹患していないが、しかしルールはルールである。
また何より、たとえば客である俺のほうがキャストのユンファさんに「シャワー浴びていないけど抱かせて」と迫っているのならまだわかるが、なぜかその「店のルール」を忘れようもない、俺よりも店のルールを遵守するべきキャストのユンファさんのほうが、俺に「シャワーを浴びる前に僕を抱いて」と積極的に迫ってきている。
それこそまるで一般の恋人同士のような、気持ちが盛り上がっちゃったからシャワーなんかもういいや、むしろ彼の汗の匂いでさえ何かいやらしい気分になれて、たまにはこういうのもいいよね、こういう獣のようなえっちも悪くないよね――なんて……理性より肉欲、恋愛感情爆発、といった感じの情熱的な求め方を、ユンファさんは「仕事として」俺にしてきているのである(もちろん演技でね)。
これは……一体どういうことでしょうね――。
「……舐めて綺麗に…? しかし……」
と俺が困惑していると、ユンファさんは俺を誘惑するゆるんだ切れ長の目で眺めながら、うっとりと発情した(演技の)微笑をく…と少しかたむける。
「…むしろ舐めたいんです…舐めさせてください…」
「……な、にを…」
馬鹿、聞いてどうする――聞かずともわかりきったことである――と俺はすぐに後悔したが、後悔というものは往々にして取り返しがつかないからこそ後悔なのである。
ユンファさんはふとはにかむように可憐に目を伏せ、恥ずかしそうな小声でこう言った。
「…カナエ君の…洗っていない、おちんちん…」
「……、…、…」
なぁ゛んて、こ、と、を゛、…俺は仮面の下で赤面しながら愕然としている。
それは…それは、――この媚態、媚態は媚態としても大変なことである。本当に大変なことだ。これは大変だ…(男とは興奮するとみな概してこ う な る ものである)。
その上品な綺麗なお顔で何をおっしゃっているのやら…わからない。わからないわからないわからない、なぜそのような……。
「…あ、あ、あ、ぁああのいや、汚いですから、…何にしても、どこにしてもね……」
まあもう、俺は今日はもう二度もシャワーを浴びてはいるのだけれど。
したがって――例えばこれで今ユンファさんの「誘い」に俺が乗り、彼が俺の体を舐めたとしても、およそ俺の体が不潔であるということはないだろう。
しかし、そうして今の俺の体がそれなりに清潔であることを、俺は彼に言っていない。ユンファさんは俺が今日二度もシャワーを浴びた、というその事実を知らないはずである。
またヤマト人のほとんどは、夜風呂に入る習慣をもっている。要するに、(事実とは反するが)ともすれば昨夜から風呂に入っていないかもしれない男の体を、彼はその唇と舌で愛そう、むしろ愛させてくれと俺に頼んできているわけである。――風俗店におけるルール違反もさることながら、何と自虐的なことだろうか?
「…興奮します。汚いならなお…」
とマゾヒストぶっているユンファさんの微笑に、俺はふると真剣な顔(とはいえ彼には、俺のその目元しか見えていないことだろうが)を一度小さく横に振った。
「駄目。俺はそんなことは望んでいません。」
「……え…?」
するとユンファさんは目を丸くして驚いている。
「…シャワーも浴びていない俺の体を貴方に舐めていただくだなんて、そんなことはとても出来ない。…貴方にとても失礼だ。」
「……、…」
ユンファさんは一瞬その薄紫色の瞳を曇らせた。
しかしそれもつかの間、ユンファさんは「もしかして…」と困ったように眉尻を下げて笑う。
「…カナエ君……さっき……」
とユンファさんが目を伏せる。
――『さっき説明はしたはずだが…いや、そういえば彼、あのときかなりうわの空だったか……』
「…もしご存知だったらすみません……、ごめんなさい、多分、僕の説明が悪かったんだと思いますが…――その…もう一度プレイ内容について、ご確認いただいてもよろしいですか…?」
「……、ええ、勿論…というよりか、むしろお聞かせ願いたいところです」
どうやら俺がユンファさんの美貌に見惚れているうちに、俺の今のこの疑問に関する何かしらのヒント、あるいは答えがあったらしい。
ユンファさんは冷静な目を伏せたまま、俺にこのように確認してくる。
「…えっと…勿論お客様によってお嫌な方と、そのほうが嬉しいという方がいらっしゃいますので、プレイを始める前には必ず確認しているんですが…――即尺 、即々 はその……如何 …」
「あぁちょっと待ってください。それとは何です。即尺はわかりますけれど、即々?」
俺は右手のひらをユンファさんにかざし、素直に首を傾げる。早速わからない単語を聞いてしまいました。……ちなみに「即尺」とはシャワーを浴びる前にフェラチオをすることである。ゲイ界隈でも通用する言葉だ。
……ふとユンファさんが目を上げて俺を見る。『やっぱり彼、あのとき僕の説明を聞いてなかったんだな…』――とは呆れつつ、彼は嫌な顔はせずに、聡明な切れ長の目で俺を見ながらこう説明をしてくれる。
「即々というのは…要するに、お 風 呂 に 入 る 前 に エ ッ チ を す る こ と です。」
「……Oh……」
なんと。
そうだったのですね。どうりで。――それでユンファさんはあくまでも「仕事として」、ああした情熱的な求め方をしてきていたらしい。
俺の初耳という反応に、ユンファさんが眉尻を下げて微笑する。
「…うちのお店は、基本的なコースをお選びいただいたお客様とは、まず一緒にお風呂に入ってからプレイをするんですが…――ただ…」
「…ただ…?」
俺が仮面の頬に人差し指をそえて首を傾げると、ユンファさんは「あの…」と続ける。
「…カナエ君は、本番のオプションを付けてくださいましたよね。――それも、一番高い…“SP いちごミルクバスタイム”を……」
「ええ。勿論つけました」
どうしてもユンファさんとえっちがしたくて。
あと俺はいちごミルクが大好きなのだ。
ちなみにその「SPいちごミルクバスタイム」であるが、そもそも『DONKEY』の公式サイトに記載されていた「本番(セックス)」のオプションは、そのように濁された「SPバスタイム」という表記になっていた。――まあ一応は売春を禁じている法律上の問題で、そのような隠語的な表記にせざるを得ないのであろう(ちなみにスキン無しの行為は禁止、というのは「生ビールのご注文はご遠慮ください」と表記されていた)。
つまり建前上の「SPバスタイム」というのは、キャストが客の体を洗ってやったあと、浴室でセクシーなマッサージを施しているうちに、だんだん二人がムラムラしてきてしまって……そして二 人 の 自 由 意 志 で 、セックスをしてしまいましたとさ(そこには金銭のやり取りはないんです、あくまでもそのセクシーなマッサージのみをサービスとしております)。ということになっているのである。
そして俺はユンファさんになら幾らでも払ってよい、ましてやユンファさんを抱けるのならば何億だって惜しくないと思っていたため、「SPバスタイム」のなかでもとりわけ一番ランクの高いその「SPいちごミルクバスタイム」を選択したのだった(一応その「SPバスタイム」には何段階かランクはあったのだが、とりあえず大は小を兼ねるものだろうとも思っていた)。――あといちごミルクが大好きだからというのも本当。
「いちごミルクが大好物なものですから」
「……、…はあ……」
……俺を見るユンファさんの笑みに渋みが帯びる。
――『いや名前だけだから、いちごミルクが好きだとかそういうの関係ないだろ…』――ユンファさんは薄笑いのままふと目を伏せる。
「…えっと…とにかく、実はその“SPいちごミルクバスタイム”には、始めからその即尺、即々のプレイ内容が含まれておりまして……ちなみに即尺とはいえ、それには全身舐めも含まれているんですが…、その、はは……」
とユンファさんが苦笑する。
……なるほど。どうやら俺は出会い頭、おそらくユンファさんに「(フェラチオだけではなく)全身舐めもしますか?」とでも聞かれ、その内容を理解しないままに「はい」と答えてしまったようである。
「……、…」
しかも……ユンファさんの伏せられた切れ長のまぶたの下、その群青色の瞳がこう不思議がっている。
――『ていうか…“SPいちごミルクバスタイム”を付けておいて、それを知らないお客様なんていたのか……』――なるほど、しかもその「SPいちごミルクバスタイム」をオプションにつける客のほとんどは、むしろそのシ ャ ワ ー 前 の 背 徳 プ レ イ を目的としてつけているらしい。
「…それから…」とユンファさんが、目を伏せたままつづける。
「ちなみにうちのお店は、口内射精はどのコースでも基本プレイに入っているんですが――その“SPいちごミルクバスタイム”には、飲精…つまり、僕が貴方の精液を飲むというプレイも入っている、…というか……そのオプションは一番高いものですから、プレイオプション全部入りなんです……」
「あぁ、それは存じております」
が、その即尺や即々というのは公式サイトに記載されていないプレイ内容であったので、俺は知らなかったのである(ユンファさんからの説明や確認をきちんと聞いていなかったせいももちろんあるけれど)。
……まあ即尺はともかく即々とやらは=セックスである以上記載しようもなかろうが、とにかく俺はそのような即尺――すなわち風呂に入る前の陰茎を出会って即咥 えてもらえる背徳のフェラチオプレイ――やら、はたまた即々――更に気分が乗ってきたなり、言うなれば玄関ででさえユンファさんをそのまま抱けるという、これまた背徳のセックス――というのを知らないまま此処まで来てしまった。
それこそ、客が体験談やレビューを投稿しているサイトにおいても「建前」は厳密に守られており、たとえば挿入行為はあくまでも「スマタ」と統一されて表記されていた。
しかし――今に思えば合点がいくのだが――そういえば確かに、『苺 を注文(「SPいちごミルクバスタイム」を注文)。…(玄関でキスをしている内に盛り上がり、など流れはさまざまだが)出会ってすぐ風 呂 に 行 っ た 』などとレビューをしている客も少なくはなかった。
つまり「風呂に行った」というのは、必ずしも本当に浴室に行ったという意味合いではなく――「SPバスタイム」にかけて――玄関などで出会って即ユンファさんを抱いた、という意味合いもあったようだ。
……ところが俺は「SPバスタイム」というのと、その「風呂に行った」という隠語をなかば額面通りに受け取っていたため、たとえセックス自体はベッド上か浴室かで行われるにしても、いずれにしてもその前には風呂に入ってから(体を清めてから)行われるものだとばかり勘違いしていたのである。――ましてや『DONKEY』の公式サイトには、『性病予防のためプレイ前のキャストとの入浴をお願いしております』との記載もあったのである。
すると要するにその即尺やら即々というのは、いわば最高級の「SPいちごミルクバスタイム」をオプションにつけた者にのみ許される、もはや店と客との暗黙の了解とでもいうべきか、秘密裏 な「裏オプション」といったところなのであろう。
「ですので…」とユンファさんが、申し訳なさそうに目を伏せた憂い顔でこう言う。
「一応お会いしてすぐに、即尺や即々はどうしますか、と確認したつもりだったんですが…――申し訳ありません、僕の確認不足でした。」
ユンファさんはそうして俺に深く頭を下げてきた。
……しかし――。
「…いいえ、どうぞ貴方は頭を上げて。――俺が悪いのです。申し訳ありません」
俺もユンファさんにペコリと軽く頭を下げた。
――これは完全に俺が悪いからだ。
その旨を説明してくださっていたユンファさんの話を、俺がきちんと聞いていなかったせいである。
俺はあの通り彼の美貌に見惚れていた上、我ながらうわの空で「構いません」やら何やらとその全てを了承する返事をばかりしていた。
――つまりおそらくユンファさんはあのとき、「即尺や即々はどうしますか。そのプレイを行ってもいいですか」と俺に事前に確認してくれていたのだろうが、一方の俺はその内容を聞かず、また確かめもせず、ただ無視をするのは悪いというだけで「構いません」とでも二つ返事で答えていたのである。
俺はユンファさんに軽く頭を下げたまま、このように真摯な気持ちでつけ加えた。
「俺はあのとき貴方のその美しさに見惚れていて、貴方の言葉が少しも耳に入らないほどにうわの空でした。…そうして、きちんと貴方のお話を聞かなかった俺が全て悪いのです。…よって、貴方が謝られることは何もありません。――ご迷惑をおかけしてしまいましたね、申し訳ありませんでした。」
……といい終えてから、俺はやおら頭を上げる。
「……、…、…」
ユンファさんは驚いた顔をして俺を見ていた。
彼のほの白い薄紫色もまた驚いている。
――『僕に…頭を、下げるだなんて……』
ともだちにシェアしよう!

